民法の勉強

民法総則 代理権の濫用

代理権の範囲内の行為ありながら、代理人が代理人自身、または、第三者の私腹を肥やすために代理権を濫用し、本人や相手方に損害を与えるということがある。
もしも、代理権の範囲を超えた行為あるならば、無権代理として対処することができるが、形式的に代理権の範囲にとどまる行為でありながら、代理権限を濫用している場合は、民法上規定がないため、どう対処するべきかが問題になる。

例えば、以下のような場合である。



乙→←丙

乙は、甲から、丙から原材料を購入する代理権限を与えられていた。乙は、この権限を濫用して、丙から買い受けた原材料を第三者に転売して、その利益を着服していた。

この事例では、乙は、付与された代理権通りの行為を行っており、形式的には代理権の範囲内の行為である。従って、事が露見しない限り、乙の行った行為は、丙及び甲に対して帰属していく。
また、事が露見したとしても、甲は、代理人である乙が代理権を濫用したからといって、乙の行った行為を無効だと主張することは妥当ではない。
丙としては、権限どおりの行為を乙が行っており、乙に引き渡した原材料は甲の元に届いていると思っているわけであるから、乙の行為が無効だとするのでは、取引の安全を害することになる。
しかし、もしも、丙が乙が原材料を転売して利益を着服していることを知っていた場合には、丙を保護する必要はない。

判例、通説によると、このような事例では、民法93条の心裡留保を類推適用して、原則として、乙の行為の結果は甲に帰属することになるが、例外的に、丙が代理権の濫用の事実を知っていた場合には、甲に帰属しないとしている。

なぜ、個人に適用する心裡留保の規定が代理権の濫用で類推適用できるのか疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
代理の関係の場合は、甲と乙は、一体の人間として捉えることができます。

甲が乙に代理権を与えることで、甲が乙に乗り移っていると考えることができるわけです。
乙としても、甲だったら、同考えて行動するだろうかということを考えながら、代理権を行使することになりますから、あたかも、甲が乙に乗り移って、一体の人間となって行為していると考えることができるわけです。
そのため、乙と丙の取引は、甲と丙の間で取引しているのと同じ意味を持つことになるというのが代理の関係です。

ですから、乙の買いますという意思表示は、甲が意思表示しているのと同じことになります。そのため、乙の行った行為は原則として、甲に帰属することになります。
しかし、乙の真意は、転売を意図しているわけですが、丙がその真意について、善意であれば、依然として、その行為の結果は甲に帰属しますが、丙が悪意であれば、その行為の結果は、無効になるということです。

参考条文
民法
(心裡留保)
第九十三条  意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

(無権代理)
第百十三条  代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2  追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

以上、今日は、代理権の濫用についてでした。

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民法総則 自己契約、双方代理

自己契約、双方代理
任意代理の場合、代理権の範囲は、本人と代理人の間の協議によって決定されるが、民法によって、禁止されている代理の形態もある。
それが、自己契約と双方代理である。

参考条文 民法
(自己契約及び双方代理)
第百八条  同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

自己契約
自己契約とは、自分が当事者となる契約について、相手方の代理人となること。

例えば、以下の例がある



乙→←乙

甲が乙に対して、適当な家を探してほしいと頼み、代理権を付与した。乙は、たまたま、自分が空き家を有していたので、それを甲に売ることにした。

代理権を付与する前であれば、甲と乙、当事者同士の売買契約になるが、乙に代理権を与えてしまっている点が問題になる。もしも、乙がよからぬ心を起して、価値のない家屋を高額な価格で甲に売却したとすれば、甲の利益が害されることになる。
そのため、このような、自己契約は禁止されている。ただし、甲があらかじめ、自己契約について承諾している場合には問題ないとされている。

双方代理
当事者双方の代理人になること。

甲  乙
↓  ↓
丙→←丙

甲は、 
適当な家を探してほしいと頼み、丙に代理権を付与し、乙も家を売却してほしいと頼み、兵に代理権を付与した。

一見すれば、何の問題もないように感じるかもしれませんが、例えば、丙が乙と謀議して、価値のない家を高額な価格で売りつけようとした場合は、甲の利益が害されることになる。
そのため、このような、双方代理は禁止されている。ただし、甲、乙があらかじめ、双方代理について承諾している場合には問題ないとされている。

債務の履行については、この限りでない
債務の履行であれば、あらかじめ、やるべきことが決まっており、当事者双方の権利を害することはないから、自己契約も、双方代理も禁止されない。
例えば、不動産の売買契約では、不動産の引渡しと金銭の決済だけでなく、契約の履行行為のひとつとして、不動産登記の移転が行われるが、不動産登記申請については、司法書士が行うのが普通である。
司法書士を選任する場合は、当事者に一人ずつ司法書士が付くのではなくて、当事者双方が一人の司法書士に登記申請を依頼することになる。
この場合、形式的には、民法の禁じている双方代理に該当することになるが、不動産登記申請行為は、不動産の売買契約の際に定めた債務の履行のひとつに過ぎないので、問題ないことになる。

自己契約、双方代理の趣旨は
自己契約、双方代理が禁止されている趣旨は、結局のところ、形式が問題であるとしているのではなくて、一方当事者が利益相反行為をすることを禁じていると見ることができる。利益相反行為でなければ、自己契約、双方代理もみとめられる。
判例でも、形式的に、自己契約、双方代理に該当しなくても、実質的に利益相反行為であるならば、契約は無効であるとしている例がある。

例えば、大審院時代の判例であるが、
借家人が家屋の賃貸借契約を結ぶ際に、家主との間で紛争が生じた場合には、家主が借家人の代理人を選任することができるという契約を結んでいた事例で、108条の自己契約の規定を援用して、このような委任契約は無効であるとした。
なぜなら、このような委任契約だと、家主の息のかかった代理人が選任されることが明白であるからである。

以上、今日は、自己契約、双方代理についてでした。

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民法入門 民法総則 アーカイブス

民法総則

民法96条 詐欺取消 第三者との関係
甲が乙に騙されて、土地を乙に売却し、乙はさらに丙に対して土地を転売した。甲は、甲乙間の売買契約を取消とともに、丙に対して土地の返還請求をした。丙は、善意であるならば、96条3項によって、保護されることになります。善意というのは、甲が乙に騙されて土地を売却したのではないということです。

民法96条 詐欺 錯誤との関係
詐欺は、欺もう行為による錯誤であるといえますから、錯誤の95条との関係が問題になります。(錯誤)第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

民法96条 強迫
強迫とは、相手に畏怖を生じさせそれによって、意思表示をさせることである。(詐欺又は強迫)第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

権利能力
今日から、権利能力について解説していきます。
契約は当事者の意思表示の合致によって成立するものです。では、当事者とはいったい何者なのかという問題です。

民法3条 権利能力の取得時期 出生
我々、自然人の権利能力は、出生のときに始まります。では、出生の瞬間を事細かに考察した場合、どの瞬間をもって、出生したと言えるのかが問題となります。

権利能力の終期
自然人が権利能力を喪失する時期は死亡したときです。では、死亡とはどのような状態になったときのことかということで、脳死との問題があります。

民法総則 失踪宣告の効果
失踪宣告がなされると、元の住所を中心とする民法上の法律関係は、死亡したのと同じ扱いがなされる。しかし、あくまでも、元の住所を中心するものであるから、失踪宣告を受けた者が他所で、生きているのであれば、有効に契約締結等ができる。一切の権利能力を喪失してしまうわけではない。

民法総則 同時死亡の推定
民法 第五節 同時死亡の推定 第三十二条の二  数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

民法総則 権利能力、意思能力、行為能力
「権利能力」があれば、誰でも、有効に売買契約を締結したり、物を所有することができる。自然人であれば、誰でも、権利能力を有している。しかし、権利能力は有していても、実際に、それらの行為を行うだけの判断能力がなければ、意味がない。

民法総則 未成年者
(未成年者の法律行為) 第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

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民法総則 代理権の発生と権限の範囲

代理権はどのようにして付与されるのか。そして、代理権の範囲はどのようにして定まるのかということについてみていきます。

法定代理

まず、法定代理の場合は、本人の意思によらずして、代理権が付与され、代理権の範囲も、法定されている。
例えば、未成年者の場合は、親権者である父母がいる間は、父母が法定代理人となる。
父母がいない場合に例外的に後見人が選任されるが、いずれにしても、本人の意思によって、代理人が選任されるわけではない。
成年被後見人についても、成年後見人が選任される。

※参考条文 民法
(親権者)
第八百十八条  成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

また、法定代理の場合、代理権の範囲も、民法に規定がある。
例えば、未成年者の法定代理人である父母に対しては、以下のようにかなり包括的な代理権が付与されている。

※参考条文 民法
(財産の管理及び代表)
第八百二十四条  親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

任意代理

これに対して、任意代理については、本人が代理人に、代理権を付与することによって、代理関係が発生する。代理権に与える契約としては、主に、委任契約があげられる。
本人と代理人の間に委任契約が成立し、代理関係があることを証するために、渡される文書として、「委任状」がある。もちろん、代理関係が成立するために、必ずしも、委任状が必要というわけではないが、現実には、委任状を付与しなければ、代理権の範囲が明確にならない。
よくあるトラブルが、白紙委任状を交付してしまって、悪用されてしまうというものである。したがって、委任状を交付するときは、どのような行為について、代理権を付与するのかを明確に記載した上で、付与することが望ましい。

任意代理の範囲については、本人と代理人当事者間の協議によって、決定されるものであって、基本的に、民法等の法律が代理権の範囲を定めることはない。
しかし、ある程度の枠組みは設定しておかなければ、代理権を付与する際に、困ることがある。
例えば、海外に長期出張する夫が妻に対して、包括的に、財産の管理を任せるといった場合。妻はどこまで、夫の財産を処分したりできるのであろうか。
任意代理であるから、妻は、夫の財産をどのように扱ってもかまわないとするのでは、不都合である。土地、建物、などを勝手に売却されてしまったのでは、夫もうかうか海外出張に行くことができないであろう。
そこで、代理権の範囲について、一定の制限を民法でも設けた。
すなわち、代理権の範囲が明らかでない場合は、最低限の範囲に代理権を限定することにした。

※参考条文 民法
(権限の定めのない代理人の権限)
第百三条  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一  保存行為
二  代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

第一号の保存行為については、財産の現状を維持するための行為とも言われ、例えば、家屋等が雨漏りする場合に、ちょっと修理してもらうというような行為である。
第二号の利用行為とは、収益を図る行為で、また、改良行為とは、財産の価値を増加させる行為のことで、銀行にお金を預けるというようなことである。

これらをまとめて「管理行為」と呼ぶ。
したがって、夫から財産の管理を任された妻は、上記の行為についてのみ、代理権限を有するのであって、土地、建物などを勝手に売却するような行為については、代理権が付与されていない。

以上、今日は、代理権の発生と権限の範囲について、簡単に紹介しました。

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民法総則 代理の制度

今日から、代理の制度について解説していきます。代理の制度は、民法総則における最も重要な制度のひとつです。資格試験でもよく出題される分野ですので、しっかりと勉強していきましょう。

売買契約のような契約は、本来、売主と買主が、直接、会って、締結するものです。
しかし、中には、制限能力者のように契約等の法律行為を有効に締結することができない方もいらっしゃいます。また、制限能力者でなくても、多忙のために、自ら、契約締結交渉を行うことができない場合もあります。

そのような場合に、代理という制度が設けられています。
代理とは、日常生活でも利用しているとおり、本人に代わって、何らかの行為をするという生徒です。

民法においては、代理は次の3つの場合を想定して規定を設けています。

制限能力者の代理「法定代理人」
これまで、取り上げてきたように、制限能力者については、本人が自ら、契約等の法律行為を行うことができないこともある。そこで、法定代理人や後見人などが本人に代わって契約締結等の法律行為をなすことになる。民法によって、代理人を付することが規定されているため、本人が、自らの意思で、代理人を選任しているわけではない。
このような代理のことを「法定代理人」と呼ぶ。
未成年者の場合は、第一義的には、親権者。親権者がいない場合は、後見人が選任される。
また、成年被後見人には、成年後見人が選任される。
なお、制限能力者であっても、被保佐人の保佐人や被補助人の補助人は、一定の契約締結等の法律行為に対して、同意を与えるだけであるから、代理人となるわけではない。

法人の代表
民法では、自然人以外にも、法人というものに対しても、権利能力を与えている。
民法で規定しているのは、人の集合である社団法人と、財産の集まりである財団法人である。また、会社法においては、株式会社、合同会社などが定められているが、いずれの法人であっても、観念的な存在であり、そこに意思表示できるものがいるわけではない。
そこで、法人を代理して行為をするものが必要になる。
この法人の代理人のことを「代表」と表現することが多い。株式会社の代表取締役、取締役社長。社団法人、財団法人の理事長、理事などがこれに当たる。

任意代理
制限能力者でもない。法人でもない。ごく普通の人であっても、代理人を選任することがある。
例えば、本人が多忙のために、代わりの人に、売買契約締結等の法律行為を行ってもらうとか、本人は、不動産の知識に乏しいので、代わりに、宅建業者に不動産の売買契約を任せるといったような場合である。
このように、本人の意志に基づいて、代理人を選任する場合もあるが、このような代理のことを「任意代理」とよぶ。任意代理のことを私的自治の範囲の拡張としての代理と表現することもある。

代理の法律関係は
以後取り上げていくのは、任意代理についてであるが、任意代理の法律関係について簡単に紹介しておく。




乙→←丙

甲は、乙に対して、丙から不動産を購入する代理権を付与し、乙は、その代理権に基づいて、丙の不動産についての売買契約を締結する。

甲と乙の関係
甲と乙のかんけいはまさに、代理の関係である。代理権は、委任契約等によって付与されることがある。委任契約を締結し、委任状を交付することで、甲と乙は代理関係になる。
乙は、代理権限の範囲内においてのみ、代理権を行使することができ、代理権限を逸脱した行為については、「無権代理」となり、原則として、乙の行為の結果が甲に帰属することはない。

乙と丙の関係
乙と丙の間には、売買契約が締結されることになるが、その売買契約の結果は、乙に帰属することはなく、甲と丙との間にもたらされることになる。
もしも、乙が甲から与えられた代理権を逸脱する法律行為を行った場合には、原則として、無権代理になるのであるから、乙の行為の結果が甲に帰属することはない。しかし、それでは、乙の代理権を信じた丙が不利益を蒙ることがある。
そこで、一定の場合には、丙を保護して、乙の行為の結果を甲に帰属せしめるようにする必要がある。この制度のことを「表権代理」と呼ぶ。

甲と丙の関係
原則として、売買契約の結果は、甲と丙の間にもたらされることになる。
なお、表見代理等があった場合には、丙から甲に対して、何らかの行為を要求することもあるし、損害賠償請求等の問題になることもある。

以上、今日は、代理について、簡単に紹介しました。

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民法総則 制限能力者との取引

制限能力者制度は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人を保護するための制度であるが、その分、制限能力と取引する相手方にとっては、取引の安全を害されることになりかねない。
そこで、相手方に対しても、制限能力者の権利を害しない範囲において、一定の権利を認める必要がある。

相手方の催告権
(制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条  制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2  制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3  特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4  制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

親の同意を得ていない未成年者と取引をする場合、もちろん、親の同意を得てから、取引しに来てほしいということは可能であるものの、とりあえず、取引してしまうということもある。
その場合、未成年者のなしたる取引は取消しうるものであるから、取引の相手方としては、いつ、取消される分からず、不安定な立場におかれる。
そこで、取引の相手方に、取引を確定的なものにするための権利を与えた。
すなわち、取引の相手方は、法定代理人である親に対して、取引を取消すのか、追認するのかの返事を1ヶ月以上の期間を定めて、催告することができる。未成年者が、成年に達した場合も、同様に、元未成年者に対して催告することができる。
その催告に対して、返事がない場合には、取引を追認したものとみなすことで、取引を確定的なものにすることができる。

また、被保佐人、被補助人に対しても、同様に、保佐人、補助人の同意を得て追認するかどうかの催告をすることができ、返事がない場合には、取引を取消たるものとみなすことにしている。

制限能力者の詐術
(制限行為能力者の詐術)
第二十一条  制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

制限能力者が行為能力があるかのような詐術を用いた場合には、取消権を失うことになる。
例えば、未成年者が、年齢を偽る場合や、年齢は偽らないものの親の同意があるといって、取引をした場合には、後で、取消権を行使することができなくなる。

取消による返還義務の範囲
(取消権者)
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
(取消しの効果)
第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

制限能力者が、取消権を行使すると、契約等は初めに遡ってなかったものとして扱うことになるので、受け取ったものや金銭は不当利得として全部返還しなければならない。しかし、制限能力者に対して、遡及効を厳格に適用していくと、制限脳略者を保護する意味がなくなってしまう。
例えば、受け取った金銭を浪費していた場合でも、全部返還しなければならないというのでは、制限能力者保護の意味がない。
そこで、制限能力者については、現に利益を受ける限度。すなわち、現存利益のみを変換すればよいとされている。

では、現存利益とは何かということが問題になるが、
具体的には、遊行費など特別なものに浪費している場合などは、現存利益がないとされ、日常生活の費用については、本来は自分で出費しなければならないものであるから、その分、自分の懐に現存利益が残っているはずであるから、返還しなければならないとされている。

以上、今日は、制限能力者との取引についてでした。

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民法総則 成年被後見人、被保佐人、被補助人とは

未成年者以外の方であっても、重要な取引において、保護するべき方が存在する。例えば、痴呆の方や高齢者で判断能力が衰えている方などが、悪質業者に騙されて、財産を失うということもある。このような事態を放置することは、妥当ではないので、民法によって、一定の保護を与えることにした。

それが、成年被後見人、被保佐人、被補助人などの制度である。
重要な財産の取引の際に、意思能力がなかった場合は、当該取引は、当然無効であるが、無効を主張するためには、取引当時、意思能力を欠く常況に合ったことを証明しなければならないが、それは容易なことではない。
そこで、あらかじめ、意思能力に乏しい方を成年被後見人、被保佐人、被補助人などにしておき、そのような相手方と取引するためには、成年後見人、保佐人、補助人などの同意や代理によらなければならないこととして、意思能力を欠く常況にあるものを保護することとした。

成年被後見人
(後見開始の審判)
第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第八条  後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年被後見人の法律行為)
第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

成年被後見人の法律行為は常に取消すことがでぎる。
成年被後見人には、成年後見人がつく。成年被後見人になると、例え、成年後見人の同意を得ても、単独で、有効な契約の締結をすることはできなくなる。そのため、成年後見人が代理して、契約締結等の法律行為をなすことになる。
なお、成年被後見人が単独でなしたる行為を後に成年後見人が追認することは可能とされている。
未成年者と違い、成年後見人の同意を得ても、成年被後見人が追認することはできないと解されている。(未成年者は、未成年者である間でも、法定代理人の同意があれば、追認することができるとされている。)

※追認に関する参考条文
(取消権者)
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条  取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

被保佐人
(保佐開始の審判)
第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(被保佐人及び保佐人)
第十二条  保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

被保佐人になると、重要な財産の取引については、保佐人の同意を得なければ、単独ですることはできなくなる。保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
なお、保佐人は、成年後見人と違い、代理人としての権限はないので、被保佐人に代わって、法律行為をなすことはできない。

成年被後見人が単独でなしたる行為を後に成年後見人が追認することは可能とされている。
未成年者と同様、保佐人の同意を得て、被保佐人が追認することも可能と解されている。(cf.成年被後見人は、追認できない。)

被補助人
(補助開始の審判)
第十五条  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

(被補助人及び補助人)
第十六条  補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

被保佐人の制度を部分的に取り入れた制度が、被補助人の制度である。従って、基本的には、被保佐人の制度と同様である。
注意するべき点は、「本人以外の者の請求により被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をする場合には、本人の同意が必要である」という点である。

以上、今日は、「成年被後見人、被保佐人、被補助人とは」という話でした。

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民法総則 未成年者

(未成年者の法律行為)
第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2  前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3  第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

法定代理人の同意
20歳未満の未成年者が法律行為をするためには、法定代理人の同意が必要になる。
例えば、未成年者が土地の売買契約を締結するためには、法定代理人の同意が必要になる。
法定代理人とは、普通は、両親(親権者)であり、親権者がいない場合は、後見人が選任される。
両親がそろっている場合は、両方の同意が必要であり、片親の場合は、片親でもかまわない。(民法818条3項)
なお、親権者は、代理人であるから、同意を与えるだけでなく、代理して、売買契約を締結することもできる。子供が、赤ん坊など場合は、そうするほかない。

参考条文 民法
(親権者)
第八百十八条  成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

単に権利を得、又は義務を免れる法律行為
単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。とされている。
では、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為とは何かというと、具体的に言えば、贈与契約などがこれに当たる。
贈与契約とは、簡単に言えば、物を無償で与えるというものです。
未成年者が物をもらうということは、未成年者にとっては有利になっても、不利になることはありません。ですから、法定代理人の同意は必要ないとされています。
なお、贈与契約でも、負担付贈与契約というものもあります。例えば、物をあげる代わりに、何かしてくれというものですが、このような形態の贈与契約については、実質、売買契約等の双務契約と変わりはありませんので、未成年者が単独ですることはできません。

取消権
法定代理人の同意がない法律行為は取消すことができる。
取消の行為については、法定代理人だけでなく、未成年者本人もなしうるとされている。取消も意思表示であるが、取消については、単に、契約の取消によって、元に戻るというだけのことであるし、それ以上、不利益が及ぶこともないからである。

追認
未成年者が、法廷代人煮の同意を得ずにしてなしたる行為は、取消しうるものとすると、取引の相手としては、いつまでも、不安泰な権利義務関係におかれかねない。そこで、法定代理人の同意なしになした行為であっても、後に、法定代理人が同意を与えることができる。これを「追認」という。(122条)
また、未成年者本人も、成年に達した後に、未成年である間に行った法律行為について、追認することができる。(民法124条)
なお、未成年者である間でも、法定代理人の同意があれば、追認することができるとされている。

参考条文 民法
(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条  取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。
(取消権者)
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

(追認の要件)
第百二十四条  追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
2  成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
3  前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。

法定代理人が目的を定めて処分を許した財産
未成年者であれば、どんな法律行為であっても、法定代理人の同意がなければ、有効になしえないとなると、未成年者にとっても不便であるし、取引の相手方も、未成年者と取引をしたがらなくなる。
そこで、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産については、未成年者でも単独で行為することができるとした。
具体的には、お小遣いをもらったら、そのお小遣いについては、未成年者でも、自由に使うことができる。

営業の許可
営業行為を許された未成年者については、営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。ここで言う営業とは、営利を目的とする独立の事業のことであって、他人に雇われて働くことは、営業には当たらないといわれている。この規定があるため、学生起業等も未成年者でもできることになる。

参考条文 民法
(未成年者の営業の許可)
第六条  一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2  前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

婚姻による成年擬制
未成年者であっても、法定代理人の同意があれば、婚姻することができる。未成年者が婚姻した場合は、これにより、成年に達したものとみなされる。従って、法律行為については、有効になすことができるようになる。
なお、成年に達したとみなすのは、民法上の法律行為においてであって、飲酒やタバコ等も自由にできるようになるわけではない。

参考条文

(婚姻適齢)
第七百三十一条  男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
(未成年者の婚姻についての父母の同意)
第七百三十七条  未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2  父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。

(婚姻による成年擬制)
第七百五十三条  未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

以上、今日は、未成年者の法律行為についてでした。

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民法総則 権利能力、意思能力、行為能力

「権利能力」があれば、誰でも、有効に売買契約を締結したり、物を所有することができる。
自然人であれば、誰でも、権利能力を有している。しかし、権利能力は有していても、実際に、それらの行為を行うだけの判断能力がなければ、意味がない。

例えば、赤ん坊は売買契約の意味を理解できない。
契約というのは、当事者の意思が合致することにより成立するものであるから、少なくとも、自ら意思を表示できるだけの能力が備わっていなければならない。
この能力のことを「意思能力」と呼ぶ。
子供の場合、意思能力は、大体、小学校に入学するころから備わりだすとされている。
最も、おもちゃを買う意思能力と、土地を購入する意思能力は、程度の差があるから、取引の種類によって、意思能力の有無について、判断しなければならない。
意思能力が欠けている子供であっても、親などが代わりに売買契約等を締結することはできる。親などが代理すれば、例え、赤ん坊であっても、土地を購入したり、所有することができる。

子供のように、意思能力が十分でない人については、契約等において、大人と同様に扱うことは妥当ではない。
例えば、小学生が土地、建物など莫大な財産を有していたとして、大人と土地について、売買契約を締結することは、ちょっと危険である。
もしも、騙そうと思えば、簡単に騙せてしまうだろうし、極端な話、テレビゲームと土地を交換しようなどと言う交換契約を締結してしまいかねない。
やはり、一定の法律行為をするためには、ある程度の能力が必要である。この能力のことを、「行為能力」と呼ぶ。

子供のように、十分な能力が備わっていない人については、民法によって、行為能力を制限することで、保護することにした。
例えば、子供の場合は、両親の同意がなければ、土地の売買契約を締結することはできない。もしも、親の同意なしに売買契約を締結したとしても、後から、取消すことができるようにしたのである。(民法5条2項)

このように、行為能力が制限されている人のことを「制限行為能力者」と呼ぶ。
制限行為能力者は、未成年者だけではない。未成年でなくても、痴呆などにより、うまく意思を表示できなくなってしまうこともある。そのような方についても、裁判所に申し立てることで、制限行為能力者となることができ、民法の保護を受けることができる。

制限行為能力者は以下の4つに分類される。

1、未成年者
(未成年者の法律行為)
第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2  前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3  第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

2、成年被後見人
(後見開始の審判)
第七条  精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第八条  後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年被後見人の法律行為)
第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

3、被保佐人
(保佐開始の審判)
第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
(被保佐人及び保佐人)
第十二条  保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一  元本を領収し、又は利用すること。
二  借財又は保証をすること。
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四  訴訟行為をすること。
五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

4、被補助人
(補助開始の審判)
第十五条  精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

(被補助人及び補助人)
第十六条  補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

以上、民法総則 権利能力、意思能力、行為能力についてでした。

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民法総則 同時死亡の推定

民法 第五節 同時死亡の推定
第三十二条の二  数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

同時死亡の推定は、親と子が災害などに巻き込まれて、死亡した場合、どちらが先に死亡したのか分からないという場合に、適用されるものである。
どちらが先に死亡したかというとは、相続において重要になる。

以下の家族構成で考えよう。

両親

甲ー乙
 ↓
 丙

甲乙夫婦には、子丙がいる。甲の両親も健在である。甲は土地た鋳物を含む財産を保有している。一方、丙にもお小遣い程度ではあるが貯金がある。
この家族の中で、甲と丙が災害に巻き込まれて死亡した。

もしも、甲が先に死亡したとすると。甲の財産は、民法の規定により、妻乙が2分の1と子丙が2分の1受け継ぐことになる。
その後、丙が死亡することで、全財産が妻乙のものになる。
逆に、子丙が先に死亡していたとすると、子の丙の財産を甲乙が2分の1ずつ相続し、その後、甲が死亡した後に、甲の財産は、妻乙が3分の2、両親が3分の1受け継ぐことになり、妻乙としては受け継ぐことのできる財産が減ってしまう。

親子で災害などに巻き込まれた場合には、どちらが先に死亡したかは不明確な場合が多い。しかし、相続財産については、重大な影響を及ぼすことになるので、同時死亡の推定という規定をおいた。

同時死亡の推定が適用されると、以下のように処理される。

<甲の財産について>

両親

甲ー乙

甲の財産の相続については、子である丙ガ最初からいなかったものとして扱う。そのため、甲の財産は、妻乙が3分の2、両親が3分の1相続することになる。

<丙の財産について>

両親

 ー乙
 ↓
 丙

丙の財産については、甲がいないものとして扱う。そのため、乙のみが、相続することになる。

※参考条文
(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

以上。今日は同時死亡の推定についてでした。同時死亡の推定は、そういう制度があるということだけでなく、具体的にどのように相続されるのかということも抑えておくようにしましょう。

以上、民法総則 失踪宣告の効果についてでした。

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民法総則 失踪宣告の効果

失踪宣告がなされると、元の住所を中心とする民法上の法律関係は、死亡したのと同じ扱いがなされる。
しかし、あくまでも、元の住所を中心するものであるから、失踪宣告を受けた者が他所で、生きているのであれば、有効に契約締結等ができる。一切の権利能力を喪失してしまうわけではない。

問題は、失踪宣告を受けた者が元の住所地に帰ってきた場合である。
踪宣告を受けた者が元の住所地に帰ってきたとしても、当然には、失踪宣告の効力が失われるわけではない。本人、または利害関係人が、家庭裁判所に対して、失踪宣告の取消を求めなければならない。
取消されることにより、原則として、失踪宣告は過去に遡ってなかったものとして扱われる。
例えば、相続財産は、失踪者の元に返さなければならなくなるし、元の婚姻関係が復活することになる。

しかし、それでは、現状の生活関係に支障が生じることもありうる。
そこで、一定の場合には、失踪宣告を受けたものの権利を制限している。

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2  失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

甲ー乙→←丁
 ↓
 丙→学費・遊行費

上記の図で、甲が失踪宣告を受けたあとに、乙と丙が、甲の財産を相続し、乙は、その財産を丁に対して売却したとする。丙は甲の財産を学費や遊行費などに浪費した。
その後、甲が元の住所地に戻ってきたとして、甲から相続した財産はどうなるのか。

まず、32条1項によれば、「失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。」としていることから、乙と丙の間の売買契約については、乙と丁が「甲が生きていること」について善意であるならば、売買契約は有効であるとしている。
通説・判例では、善意は、取引の相手方、丁だけでなく、配偶者乙も善意でなければならないとしている。

※なお、丁から、さらに転得したものがいた場合に、転得者が悪意の場合にはどうなるのかということをめぐる議論がある。虚偽表示のところで検討した絶対的攻勢、相対的構成と同じ考え方で考えることができる。

では、丙が甲の財産を学費や遊行費などに浪費した場合はどうなるのか。
民法32条2項によれば、「現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。」としている。
従って、丙は、現在、有している財産のみ返還すればよく、学費や遊行費として利用した額については返還する必要はないということになります。

なお、民法32条2項の性質は、不当利得の返還ということになりますが、不当利得の返還については、民法703条、704条に規定があり、善意か悪意かによって、返還すべき、財産の範囲が異なっています。

※参考条文
(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

民法32条2項には、善意、悪意を問題としていません。有力説には、それが合理的だと指摘するものもありますが、通説では、悪意者を保護する必要はないとして、
民法703条、704条、同様に善意か悪意かによって、返還すべき、財産の範囲が異なるようにするべきであるとしています。
すると、通説の立場では、民法32条2項は、民法703条、704条の規定をそのまま定めた、存在意義の乏しい規定ということになります。

次に、婚姻関係です。

甲ー乙→←丁

甲が失踪宣告を受けたあと、乙は丁と婚姻した。その後、甲が元の住所地に帰ってきた。

かつての通説では、この場合も、32条の「この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。」という規定を適用して、
乙、丁が善意であれば、後婚のみ有効になり、甲との関係は復活せず、

乙または丁が悪意であれば、前婚が復活して、重婚状態になる。
重婚状態になるということは、前婚については、離婚原因(770条1項5号)。後婚については、取消原因(732条、744条)となる。

しかし、現在の有力説では、婚姻関係については、32条を適用せずに、常に、後婚が有効であるとして、後は、慰謝料や財産分割の問題として処理するべきであるとしています。

※参考条文
(重婚の禁止)
第七百三十二条  配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
(不適法な婚姻の取消し)
第七百四十四条  第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
2  第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

(裁判上の離婚)
第七百七十条  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

以上、民法総則 失踪宣告の効果についてでした。

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権利能力の終期

自然人が権利能力を喪失する時期は死亡したときです。では、死亡とはどのような状態になったときのことかということで、脳死との問題があります。
死亡すると、その人の有していた財産は、相続人に相続されますし、相続人がいなければ、国庫に帰することになります。また、婚姻関係も終了し、残された配偶者は、再婚することができるようになります。

死亡は、現実にその人が死亡したことを確認できる場合だけではありません。
例えば、災害や士世故などに巻き込まれて、死亡したことがほぼ確実であるが、死体を確認できなかったような場合でも、直ちに死亡したと扱うことはできません。
そのような場合に備えて、民法及び戸籍法で、死亡を認定する制度があります。

戸籍法の認定死亡制度(戸籍法89条)
災害や事故に巻き込まれて、死亡したことは確実と見られるが、死体を確認できなかった場合には、取調べに当たった役所が死亡の認定をして、戸籍上、死亡として扱うという制度です。この制度は、民法上の制度ではなくて、戸籍法上の制度に過ぎません。

※戸籍法
第八十九条  水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。

失踪宣告(民法30条~32条)
失踪宣告は民法滋養の制度で、この手続きを経ることにより、従来の住所を中心とする法律関係が終了することになります。
失踪宣告がなされれば、相続が開始しますし、残された配偶者は再婚できるようになります。

失踪宣告には、普通失踪と特別失踪があります。

特別失踪は、災害や事故等の危難に巻き込まれて、死亡したことは確実と見られるが、死体を確認できなかった場合などに、その危難が去った後、1年間生死不明の状態がつついた場合に、利害関係人が、家庭裁判所に申し立てることで、失踪宣告を行います。
特別失踪の失踪宣告がなされると、「危難が去ったときに」死亡したものとみなされます。

普通失踪は、災害や事故等の危難に巻き込まれたわけではないものの、行方不明になって、生死不明の状態が7年間続いた場合に、利害関係人が、家庭裁判所に対して、失踪宣告の申し立てをすることができるというものです。
普通失踪の失踪宣告がなされると、「7年間の期間満了時に」死亡したものとみなされることになります。

失踪宣告がなされると、その人の有していた財産は、相続人に相続されますし、相続人がいなければ、国庫に帰することになります。また、婚姻関係も終了し、残された配偶者は、再婚することができるようになります。
もっとも、婚姻関係については、配偶者の生死が3年間不明の場合は、離婚原因となるため、7年間もね行方不明の配偶者を待っている必要はありません。(民法770条)

※参考条文
民法
(失踪の宣告)
第三十条  不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(裁判上の離婚)
第七百七十条  夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2  裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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民法3条 権利能力の取得時期 出生

我々、自然人の権利能力は、出生のときに始まります。

民法3条
第一節 権利能力
第三条  私権の享有は、出生に始まる。
2  外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

では、出生の瞬間を事細かに考察した場合、どの瞬間をもって、出生したと言えるのかが問題となります。
すなわち、母体から、少しでも、胎児の体の一部が、見えた時点(一部露出説)で、出生したといえるのか。
母体から完全に出た時点(全部露出説)で、出生したといえるのかが問題となります。

民法での通説は、母体から完全に出た時点(全部露出説)とされています。なぜなら、体の一部が出ただけでは、安産であるどうかの判定はできないからです。
一方、刑法では、一部露出説が通説になっています。なぜなら、体の一部だけでも出た時点で、赤ん坊に対して、危害を加えることが可能だからです。

問題となるのは、出生前の胎児の扱いです。

二つの点で問題となります。ひとつは相続、もうひとつは、不法行為との関係。
基本的に、権利能力がなければ、契約はもちろんのこと、相続、不法行為による損害賠償請求の主体となることもできません。しかし、胎児については、将来は生まれてくることが予想されているわけですから、何が何でも、出産しなければ、権利能力を取得できないとするのは不都合であろうということから、一定の場合には、すでに権利能力を有しているものとしています。

まず、相続から見ていきましょう。
民法886条1項によると「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」としています。

例えば、
甲ー乙
 ↓
 丙
夫甲と妻乙の夫婦の間に、子丙が授かった。丙が出生する前に、夫甲が不慮の事故により、なくなった。

この場合、夫甲の財産は、法定相続では、
子丙が生まれる前であれば、妻乙が3分の2、夫甲の親が、3分の1.相続することになります。
一方、子丙が生まれていれば、妻乙が2分の1、子丙が2分の1、相続することになります。

子丙はすでに母親乙のおなかの中で生きているのに、たまたま、出生が遅いだけで、財産を取得できなくなってしまうというのでは、不都合であろう。ということで、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」としたわけです。

※参考条文
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条  胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2  前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

次に、損害賠償請求について考えて見ましょう。
上記の設例で、甲を死亡させた加害者に対して、損害賠償請求する場合。
民法の3条をそのまま適用すると、子丙は生まれなければ、損害賠償請求できないことになってしまいます。しかし、子丙はすでに母親乙のおなかの中で生きているのに、たまたま、出生が遅いだけで、損害賠償請求できないというのは不都合なわけです。
そこで、民法721条により、胎児は、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」としています。

※参考条文
(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)
第七百二十一条  胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。

なお、相続にしても、損害賠償請求にしても、権利はあるものの、おなかの中の胎児が、生まれない限り、実際の権利行使できないと解されています。
損害賠償請求に関する判例では、胎児の間に母親を代理人として損害賠償請求できるかどうか争われた事案で、胎児である間は、損害賠償できないとしています。(阪神電鉄事件)
従って、生まれてから、母親が法定代理人として、損害賠償請求していくということになります。

以上、今日は、権利能力の取得時期の話でした。

この記事は、ゼロニュース 民法3条 権利能力の取得時期 出生より提供されています。

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民法総則 先週のまとめ

民法総則

虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その2 第三者の範囲
丙が善意の丁に対して、土地を売却してしまった場合には、丁は保護されるのだろうか?

虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その3 第三者に登記は必要か
今日は、94条2項の第三者が保護されるためには、登記が必要かどうかという問題です

民法94条2項の類推適用
権利外観法理の現れであると考えられているために、本来の虚偽表示の事案以外でも、権利外観法理を適用するべきだと考えられる場面で、類推適用されることがある。

民法94条2項と公信力
今日は、売買の対象物が不動産ではなくて、動産だったらどうなるのかという問題です。

心裡留保と虚偽表示の関係
心裡留保の条文と虚偽表示の条文をよく見ている方は、お気づきだと思いますが、心裡留保は、同時に虚偽表示でもあるわけです。

民法95条 錯誤とは
錯誤というのは、簡単に言うと、意思表示をした本人(表意者)が、重大な勘違いをしていたときには、無効にすることができますよ。ただし、意思表示をした本人(表意者)に重大な過失があったときは、意思表示を無効とするというものです。

民法95条 錯誤の要件
1、法律行為の要素に重大な錯誤がある。2、表意者に重大な過失がないこと。の二つが要件となっています。まず、最初に問題となるのは、「法律行為の要素に重大な錯誤がある。」というのは、どういう意味かということです。

民法95条 多数説の錯誤理論
動機の錯誤と、表示行為の錯誤をはっきり区別することは、できないという点。錯誤による意思表示を無効とするべきか否かの判断においては、相手方の事情も考慮するべきであるとして、批判されています。

民法95条 錯誤無効の性質
95条但し書きには、「表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」とあるため、無効を主張できるものが限定されていると解されています。

民法96条 詐欺
詐欺の意味については、常識でわかると思いますが、民法で言うところの詐欺は、一般の意味での詐欺とは若干異なります。

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権利能力

今日から、権利能力について解説していきます。
契約は当事者の意思表示の合致によって成立するものです。では、当事者とはいったい何者なのかという問題です。

まず、我々、一般人が、契約の当事者になりうることに問題はないと思います。もちろん、未成年者や、赤ん坊でも、親などが代理人となることで、契約の当事者になることができます。
また、判断能力が衰えている高齢者であっても、補助者や保佐人、後見人などが付くことにより、契約行為についてサポートすることが可能です。
外国人も、一定の制約はあるものの、通常の契約については、問題なく行うことができます。

このように、人であれば、誰でも、契約の当事者となりうるわけです。
このことを私法上の権利義務の主体となりうる資格という意味で、「権利能力」と呼びます。

※参考条文
第一節 権利能力
第三条  私権の享有は、出生に始まる。
2  外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

では人以外に権利能力が認められることはあるのでしょうか。

例えば、知性の高い猿やイルカなどに、権利能力が認められるのでしょうか。
民法上の権利能力というのは、知性の有無によるのではなくて、人であるかどうかによって判断します。
よって、知的能力の高い猿やイルカでも、民法上は「物」でしかなく、権利能力を有することはありません。
たとえ、人類よりも知性の高い宇宙人が現れたとしても、民法上は、「物」にすぎないわけで、地球人と売買契約を行うことはできないわけです。

そして、人には、自然人だけでなく、法人というものも含まれます。
民法上権利能力が認められるのは、我々、自然人だけでなく、法律により、権利能力が認められた法人という主体も含まれます。
簡単に言えば、会社などの組織のことです。
会社については、会社法に規定がありますが、民法にも、社団法人、財団法人、権利能力なき社団などの規定があります。

以上、今日は、権利能力について簡単に説明しました。

この記事は、ゼロニュース 権利能力より提供されています。

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民法96条 強迫

強迫とは、相手に畏怖を生じさせそれによって、意思表示をさせることである。

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

甲→←乙

価値のない壷

やくざ風の甲は、乙の家を訪問し、価値のない壷を見せて、これは高価なものだから、10万円で買わないかと迫った。
乙は買わないといったが、甲が「どうなってもいいのか」とすごんできたため、乙は仕方なく、価値のない壷を買った。

このような場合、乙の買うという意思表示はあるものの、買うという意思表示をするまでの過程は強迫によるもので任意性はない。このような、強迫による意思表示については取消しうるものとしている。

強迫の場合は、詐欺の場合よりも、表意者保護の必要性が高いため、詐欺の場合と違い、96条2項、3項の適用はない。条文を良く見ると、96条2項、3項は、詐欺の場合のみ適用されることが分かると思う。
従って、甲が乙の強迫を受けて、土地を乙に売却し、乙が土地を丙に売却したとしても、甲は、取消せば、丙の善意、悪意を問わず、丙に対して、土地の返還請求ができる。

甲→←(強迫)乙→←丙(第三者)

土地

一方、甲が強迫を理由に甲、乙間の売買契約を取消た後に、乙が丙に土地を売却した場合は、乙を起点にして2重譲渡があったのと同じであるから、対抗問題となる。なお、有力説によれば、94条2項の類推適用により、取引の安全を図ることができるとしている。

さて、強迫の場合で問題となるのは、強迫の概念である。どのような場合が強迫に当たるのかという問題がある。
一般的に強迫は、目的と手段が不当であることを要件としている。
上記の設例は、脅して価値のない物を売りつけており、強迫に当たるといえる。

では、以下のような場合はどうか
会社のお金を横領した乙に対して、社長の甲は、お金を貸したことにしておくから、返さなければ、横領罪で告訴すると述べ、借用書を書かせた。
それでも、返済しない乙に対して、後日、横領罪で告訴するとともに、借用書に基づき、返還請求をした。
乙は、借用書は、強迫により書かされたものだから、取消すといった。認められるか?

この設例では、甲が告訴するという手段も目的も法に基づく、正当なものであり、強迫には当たらないとされている。よって、乙の主張は認められない。
このように、正当な目的ならば、問題ないものの、どこまでが強迫ではなくて、どこからが強迫であるかについては、難しい判断を迫られることがある。

もっとも、試験では、どれが強迫に当たるかという問題が出題されることはないので、強迫は、目的と手段が不当であることが要件だということを抑えておけば十分である。

以上、今日は、民法96条 強迫の話でした。

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民法96条 詐欺 錯誤との関係

詐欺は、欺もう行為による錯誤であるといえますから、錯誤の95条との関係が問題になります。

(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

甲→←(欺もう行為)乙→←丙(第三者)

甲の土地

甲は騙されて、乙に対して土地を売却し、乙は甲の土地を丙に売却した。後に、甲は、騙されたことに気づいて、土地を取り戻そうと思った。
この場合、甲は、詐欺によって、売却していることから、詐欺による取消を主張できますし、騙されたことで、錯誤に陥っているわけですから、錯誤無効を主張することもできます。
96条3項によれば、第三者丙は、善意であれば保護されることになります。一方、95条錯誤には、第三者保護規定はありません。もしも、甲が錯誤無効を主張したとすると、第三者丙は保護されなくなってしまうのでしょうか?

しかし、それでは、取引の安全を害しますし、整合性がありません。
そこで、甲が95条による錯誤無効を主張してきた場合、どのように第三者丙を保護するべきかということが問題になります。

無効を主張する前の第三者

ひとつの考え方として、94条2項を類推適用するという考え方があります。
しかし、94条2項の類推適用は、当事者が虚偽の外観を作り出したという事実がなければ利用できません。甲は、虚偽の外観を放置したわけではなく、騙されたわけですから、無効を主張する前の第三者との関係で94条2項の類推適用を主張することは妥当ではありません。

そこで、有力説は、甲が95条の錯誤を主張してきた場合でも、96条3項を類推適用するべきであるとしています。
なぜなら、錯誤と詐欺を比較すると、自分で勘違いした錯誤の場合よりも、相手に騙された詐欺の方が甲を保護するべきであるが、96条3項によって、詐欺のほうが表意者甲の保護が薄くなってしまうのでは、バランスを失する。
詐欺の場合でも、96条3項により、第三者が保護されているのだから、錯誤の場合も、同様に96条3項を類推適用することで、第三者を保護するべきであるとしています。

無効主張後の第三者

一方、無効を主張した後の第三者との関係では、無効主張後は、直ちに登記を元に戻すべきであり、それを怠っている間に第三者が現れているなら、虚偽の外観を放置したという事実があるわけですから、94条2項の類推適用により、第三者を保護すればよいことになります。

以上、今日は、民法96条 詐欺 錯誤との関係についてでした。

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民法96条 詐欺取消 第三者との関係

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

詐欺についても、虚偽表示の第三者保護規定(94条2項)と同様の規定が、96条3項におかれています。

甲→←(騙す)乙→←第三者丙

土地

甲が乙に騙されて、土地を乙に売却し、乙はさらに丙に対して土地を転売した。甲は、甲乙間の売買契約を取消とともに、丙に対して土地の返還請求をした。

この場合、丙は、善意であるならば、96条3項によって、保護されることになります。善意というのは、甲が乙に騙されて土地を売却したのではないということです。
また、96条3項についても、94条2項同様。第三者が保護されるために無過失である必要はあるのかという問題があります。
学説の多くは、96条3項は、94条2項同様、権利外観法理の現れであるとして、第三者が保護されるためには、無過失も要求するべきではないかとしています。
しかし、判例は、94条2項同様、善意のみで足りるとしています。

次に、第三者丙は、いつまでに権利関係に入る必要があるのかという問題があります。
甲が詐欺に気づいて、甲乙間の売買契約を取消す前に乙と丙の間の売買契約がなされた場合(取消前の第三者)
甲が詐欺に気づいて、甲乙間の売買契約を取消した後に乙と丙の間の売買契約がなされた場合(取消後の第三者)
どちらの例でも、結論に違いはないのかという問題です。

取消前の第三者については、96条3項によって、保護されることは疑いようがありません。
契約が取消されると遡及効といい、契約関係が過去にさかのぼってなかったことになります。(民法121条) 遡及効から第三者を保護するための規定が96条3項だということになります。

(取消しの効果)
第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

一方、取消後の第三者については、すでに、取消の遡及効によって、無権利者となっている乙から、土地を購入していることになりますから、保護されないということになります。
しかし、第三者丙としては、甲が取消したとか、甲乙間の売買が詐欺によるということを知らないことが多いわけです。それでも、取消権が行使されていれば、無権利者から買ったことになりますよというのでは、取引の安全を害することになります。そこで、一定の場合には、第三者を保護するべきではないかとしています。
そこで、判例・通説は、
取消は、取消されるまでは、有効であり、取消権が行使されることで、初めて遡及効が生じるものであるから、取消の時点を起点として、所有権の復帰があったのと同様に考えることができる。

甲(取消権)→←乙→←第三者丙

すると、乙を起点にして、二重譲渡の関係に立っているのと同じであるから、対抗問題となり、登記の前後によって、優劣が決まるということになります。

※なお、取消後の第三者については、登記の前後によって、優劣が決まることに変わりはないわけですが、その結論をどのようにして導くかということで、対抗問題として処理する(対抗問題アプローチ)のか、94条2項の類推適用による(公信力アプローチ)のかという問題があります。現在では、94条2項の類推適用による(公信力)という解釈が大半になっています。

以上、今日は、民法96条 詐欺取消 第三者との関係についてでした。

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民法96条 詐欺

詐欺の意味については、常識でわかると思いますが、民法で言うところの詐欺は、一般の意味での詐欺とは若干異なります。

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

第96条第1項

甲 →← 乙

土地(価値のない土地)

甲は、価値のない土地を将来は値上がりすると偽って、乙に対して売却した。

この場合、乙は甲の欺もう行為によって、土地を購入しているので、民法96条詐欺に該当するため、取消ことができる。
注意するのは、無効ではなくて、取消す事ができるという点。取消す事ができるということは、誰でも、取り消せるわけではなく、乙が取消すと意思表示しない限り、有効な契約であるということになります。

さて、錯誤について解説した後なので、わかる方もいらっしゃると思いますが、乙としては、騙されて、土地を購入しているということは、甲の欺もう行為による詐欺であると同時に、錯誤に陥っていることになります。

詐欺と錯誤の違う点は、詐欺の場合は相手方や第三者の欺もう行為によって引き起こされているという点です。
この場合は、錯誤の場合よりも、表意者を保護する必要性が高いので、錯誤のときのように動機の錯誤であるか、要素の錯誤であるかを問わず、取消すことができるとしているのです。
従って、詐欺のほうが錯誤よりも、表意者が保護される範囲が広いということになります。

また、錯誤と詐欺の両方の要件が重なることも珍しくありません。
では、両者が重なる場合、どっちの条文を適用するべきかが問題となります。
錯誤の場合は無効。詐欺の場合は、取消。
ということならば、効果としては、誰でも主張できる錯誤のほうが効果が大きいことになります。
しかし、錯誤無効については、取消権的無効と表現されるように、誰でも、錯誤無効を主張できるわけではなくて、原則として、表意者のみが主張できるものです。
ですから、錯誤を主張しても、詐欺を主張しても、表意者にもたらされる保護に大して違いはないということになりますので、どちらを主張してもかまわないと、解することができます。

第96条第2項
二項は、第三者が欺もう行為を行った場合の規定です。


↓(欺もう行為)
乙 →← 甲

甲の土地(価値のない土地)

乙は、価値のない甲の土地を購入したが、丙の「将来は値上がりする」という虚偽の情報を信じてのことだった。甲も、乙は、丙に騙されて購入していることを知っていた。

いくら、乙が丙の詐欺によって土地を購入しているとは言え、甲がその事実を知らない場合にまで、乙の取消権を認めると、甲が不測の損害を蒙ることになります。よって、甲自身も、乙が丙に騙されて土地を購入していることを知っている場合にのみ、詐欺による取消ができるということにしました。

以上、今日は、民法96条 詐欺について、簡単に解説しました。

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法律系資格入門 契約とは何か?

今日は、契約とは何かという話です。
契約というのは、日常生活では、あまり、耳にする機会がないかもしれません。
会社で、契約書みたいなものに触れる機会はあっても、日常生活では、不動産の売買とかで、売買契約書を手にすることくらいだと思います。

でも、私たちの日常生活でも、契約はいたるところに存在します。
何も、不動産などの高額な財産を売買するときだけでなくて、
スーパーで野菜を買うことも、スーパーとお客様の間の売買契約に該当します。

もちろん、スーパーで買い物をするのに、わざわざ、スーパーとお客様の間で、売買契約書を交わすことはありません。
しかし、契約というのは、売買契約書等の書面を交わさなくても、口頭だけでも、契約は成立するわけです。(対面主義)
売買契約書を交わすという行為は、一種の儀式みたいなものということができます。

契約というのは、民法上の制度のひとつです。
民法の条文でも、521条~696条に契約に関する事項が書かれています。
条文上は、521条~696条に鹿、契約に関する条文がありませんが、それ以外の条文についても、基本的には、売買契約のような契約関係を前提とした条文です。
民法を勉強すること≒契約法の勉強ともいい得るくらい、契約関係というものが重要になってきます。

さて、契約は・・・

この記事の続きは、法律系資格入門 契約とは何か?で御覧ください。

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法律系資格入門 宅建と行政書士 民法の解釈とは?

民法を学ぶということは、民法を理解して、実際の法的紛争を解決できる能力を養うということです。

民法の条文を見てみるとわかると思いますが、以下のように非常に抽象的な言葉で書かれています。

(公序良俗)
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

これだけ見ても、何のことかわからない方が多いと思います。

公の秩序って何?、善良の風俗って何?、法律行為って何?

疑問だらけだと思います。
民法の条文では、上記のような抽象的な言葉が1044条も続いています。
その条文を暗記するのが、民法の勉強ではありません。

その条文を一つ一つ、解釈していくことが民法の勉強です。
上記に書いたように、公の秩序って何?、善良の風俗って何?、法律行為って何?ということを考えて、答えを出していくことになります。

もちろん、小説を読んで、自分の好きなように解釈するのとはわけが違います。
小説なら、人によって、いろいろな解釈、感想を持ってもよいですが、民法の解釈は、人によってまちまちというのでは、困ります。
多少の、解釈の幅は許されるものの、一定の決まりがなければ、社会のルールとしての民法の意味がなくなってしまいますよね。

民法に限りませんが、法の解釈では、一貫性というものが要求されます。
その一貫性も個人の一貫性ではなく、民法が制定されてからの長い歴史の中での一貫性が要求されるということです。
同じ条文の解釈が現在と、過去とではまったく違う、人によってまったく違うというのでは、社会規範としての民法の意味がなくなってしまうわけです。
この一貫性のことを・・・・

この記事の続きは、法律系資格入門 宅建と行政書士 民法の解釈とは?でご覧ください。

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民法95条 錯誤無効の性質

民法95条 錯誤
(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

錯誤による意思表示は無効となる。
無効であるから、錯誤による意思表示はなかったものとして扱われるため、契約はなかったものとして、受け取った物を返還し、支払った代金も返還される。
無効であるなら、契約はなかったものとして扱われるため、本来、誰でも主張することができる。(取消の場合は、取消権者が取り消さなければ効果が生じない。)

錯誤無効の場合も誰でも主張できるのだろうか?
なぜ、このような問題が生じるかというと、95条但し書きには、「表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」とあるため、無効を主張できるものが限定されていると解されるからである。

まず、原則から。

甲 →← 乙

希少本(実は希少本ではない)

乙は、甲が所有する希少本を購入したが、実際には希少本ではなかったので、錯誤であるとして、無効を主張した。

この場合は、乙に重大な過失がなければ、錯誤による無効を主張することができます。
一方、乙に、重大な過失があったときは錯誤無効を主張することはできなくなります。

95条では、表意者が自ら無効を主張できないとあります。では、相手方甲や第三者が無効を主張することはできるのでしょうか?
錯誤無効の目的は、表意者を保護することにあります。そして、表意者に重大な過失があるときには、表意者を保護する必要はないということですから、結局、誰も。無効を主張することはできなくなります。

では、乙に重大な過失がなく、錯誤無効の主張が可能である場合は、相手方甲や第三者が無効を主張することはできるのでしょうか?
この場合も、錯誤無効の目的は、表意者を保護することに目的があるとして、乙が、錯誤無効を主張する気がないなら、原則として、相手方甲や第三者が無効を主張することはできないとしています。

相手方甲や第三者が無効を主張することはできないのが原則ですから、例外として、主張できる場合もあるのでしょうか?
以下の設例で考えてみましょう。

甲 →← 乙 →← 丙

希少本(実は希少本ではない)

乙は、甲が所有する希少本(実は希少本ではない)を購入した。その後、乙は丙に対して、希少本(実は希少本ではない)を売却した。
丙は、希少本ではないことに気づいて、乙に対して、錯誤による無効を主張するとともに、乙が無資力であったため、甲乙間の売買についても、乙の錯誤を理由に売買契約の無効を主張し、乙の甲に対する代金返還請求権を代位行使した。

※代金返還請求権の代位行使とは
丙は、債務主乙に資力がない場合に、乙に対する債権を保全するために、乙が有する債権を代わって行使することができるという制度。

(債権者代位権)
第423条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

丙が乙の甲に対する代金返還請求権を代位行使する前提として、乙と甲の間の売買契約が無効にならなければならない。
そのためには、本来は、乙自身が錯誤無効を主張しなければならないわけであるが、乙の代わりに丙が錯誤無効を主張することはできるのだろうか?

錯誤無効の目的は、表意者を保護することに目的があるとして、乙が、錯誤無効を主張する気がないなら、原則として、相手方甲や第三者が無効を主張することはできないことになります。

しかし、それでは、第三者である丙の権利が害されてしまいます。

そこで、判例は、例外的に第三者から錯誤無効を主張できる場合があるとしました。
すなわち、第三者丙は、
1、債権を保全する必要があり
2、表意者(乙)が、錯誤であることを認めている(判例では、意思表示の欠缺を認めている)
二つの要件を満たす場合には、第三者兵からの錯誤無効の主張をすることができるとしています。

このように、95条の錯誤無効は、本来の無効とは、違って、原則として、表意者のみが主張できるという特徴があります。無効を主張することができるものが限られているという点からすると、無効というよりも、取消に近いということで、95条の錯誤無効を「取消的無効」と呼ぶこともあります。

以上、民法95条 錯誤無効の性質についてでした。

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民法95条 多数説の錯誤理論

民法95条 錯誤
(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

錯誤については、
1、法律行為の要素に重大な錯誤がある。
2、表意者に重大な過失がないこと。
の二つが要件となっています。

伝統的な判例、通説の理論によると、錯誤を動機の錯誤、表示行為の錯誤に分類した上で、
1、動機の錯誤→原則として、錯誤ではない。ただし、動機が意思表示の内容として表示された場合には、民法95条の錯誤に含むことができる。
2、表示行為の錯誤→民法95条の錯誤である。
と解釈しています。

しかし、動機の錯誤と、表示行為の錯誤をはっきり区別することは、できないという点。錯誤による意思表示を向こうとするべきか否かの判断においては、相手方の事情も考慮するべきであるとして、批判され、現在の多数説が形成されています。

動機の錯誤と表示行為の錯誤をはっきり区別することはできない

錯誤というのは、人の内面の問題であるため、動機の錯誤なのか、表示の錯誤なのかを区別することは難しいわけです。

例えば、希少本といわれている本を買おうとした場合、
希少本だと信じて買ったところ、実は、どこにでも売っている普通の本だと知った場合には、希少本であることに錯誤はあっても、本を買うという意思はあるので、動機の錯誤となります。動機の錯誤であるから、錯誤無効を主張することはできません。
一方、希少本(頭の中で想像している本)と普通の本(実際に手に取った本)が同一のものだと信じたのであれば、同一性の錯誤として、効果意思を欠く表示行為の錯誤となり、この場合には、錯誤無効を主張できることになるわけです。

しかし、両者の区別は、明確であろうか?
人の内面の問題である以上、両者を区別することは難しいし、区別する実益はないように感じられます。
また、動機の錯誤は、表示されないので、取引の安全を害することになるとされているが、表示行為の錯誤も表示されない以上、両者を区別することは難しいわけです。

相手方の事情も考慮するべきである

錯誤というのは、取引の相手方が、十分な説明をしなかったとか、騙したことで、情報不足や不注意などから、不本意な意思表示をするというケースが多いものです。この点では、詐欺や強迫と大して違いはないわけです。

判例、通説の理論では、意思主義の立場から理論を組み立てて、意思の欠缺した意思表示は無効であるとしています。
その上で、錯誤の大半を占める動機の錯誤を除外することで、錯誤無効が成立する範囲を限定し意思主義と取引の安全の調整を図っています。
つまり、表意者個人の内面に迫って理論を組み立てているわけです。

一方、現在の多数説の立場では、表意者個人だけではなく、相手方との関係も考慮するべきであるとしています。
つまり、表示主義の立場に立ち、錯誤無効が狭く解釈されるのは、表示に対する信頼を保護することにより、取引の安全を図るためであると説明されているわけです。
ですから、錯誤無効の判断基準としては、動機の錯誤かどうかではなく、相手方の善意、悪意や過失を問題にするべきであるとしています。
すなわち、要素に重大な錯誤があるという要素の錯誤に加えて、相手方が悪意、または有過失の時にのみ意思表示は無効になるとしています。
この立場からは、錯誤とは、意思の欠缺ではなくて、「錯誤がなければあったであろう意思(真意)と表示との間に食い違いがある」ことと説明されることになります。

以上、今日は、多数説の錯誤理論を紹介しました。

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民法95条 錯誤の要件

民法95条 錯誤
(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

錯誤については、
1、法律行為の要素に重大な錯誤がある。
2、表意者に重大な過失がないこと。
の二つが要件となっています。
まず、最初に問題となるのは、「法律行為の要素に重大な錯誤がある。」というのは、どういう意味かということです。
錯誤を主張できる場合を「法律行為の要素に重大な錯誤がある。」に限定しているのは、意思表示と表示行為の食い違いが甚だしい場合に限定する趣旨です。

1、法律行為の要素に重大な錯誤がある。とは

民法95条 錯誤について、判例、かつての通説の立場によれば、錯誤を動機の錯誤、表示行為の錯誤に分類した上で、
1、動機の錯誤→原則として、錯誤ではない。ただし、動機が意思表示の内容として表示された場合には、民法95条の錯誤に含むことができる。
2、表示行為の錯誤→民法95条の錯誤である。

としている。
動機が意思表示の内容として表示された場合を例外扱いしたのは、動機は本来表示されないものであるから、錯誤無効を認めると取引の安全を害するが、意思表示の内容として表示されれば、取引の安全を害することはないと考えられるからである。
動機の錯誤を除外した上で、さらに、95条が適用されるには、要素の錯誤であることが必要とされている。

では、要素の錯誤とは何か?
判例、通説によれば、要素の錯誤とは、「因果関係」と「重要性」の二つの要件を備えた錯誤であるとされている。

因果関係とは、錯誤がなければ、表意者は、意思表示をしなかったであろうという関係があることを意味し、
重要性とは、錯誤がなければ、意思表示をしないであろうことが通常人の基準から言っても、もっともであるほどの重要な部分についての錯誤であることを意味する。

2、表意者に重大な過失がないこと。
重過失とは、錯誤に陥ったことについて、普通人に期待される注意を著しく欠いていることを意味する。
重過失の立証責任は、立証することで利益を受ける表意者の相手方にある。

判例、通説によると、相手方が表意者の錯誤を知っていた(悪意)であった場合には、たとえ、表意者が不注意であったにしても、表意者を犠牲にしてまで、相手方を保護する必要はないので、但し書きの適用はない。つまり、表意者は、無条件に錯誤無効を主張できるとされている。

以上が伝統的な錯誤無効の錯誤理論である。
伝統的な錯誤理論は、動機の錯誤と表示行為の錯誤を区別していますが、実際の問題として、動機の錯誤と表示行為の錯誤を区別する意味はあるのだろうかということが問題になっています。

現在の多数説では、動機の錯誤と表示行為の錯誤を区別する実益はないとして、新たな理論を考え出しました。

次回、現在の多数説の考え方を紹介します。

以上、今日は、民法95条 錯誤の要件についてでした。

この記事は、ゼロニュース 民法95条 錯誤の要件より提供されています。

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民法95条 錯誤とは

今日は、民法95条 錯誤についてです。錯誤というのは、簡単に言うと、意思表示をした本人(表意者)が、重大な勘違いをしていたときには、無効にすることができますよ。ただし、意思表示をした本人(表意者)に重大な過失があったときは、意思表示を無効とするというものです。

民法95条 錯誤
(錯誤)
第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

錯誤については、
1、法律行為の要素に重大な錯誤がある。
2、表意者に重大な過失がないこと。
の二つが要件となっています。
まず、最初に問題となるのは、「法律行為の要素に重大な錯誤がある。」というのは、どういう意味かということです。
錯誤を主張できる場合を「法律行為の要素に重大な錯誤がある。」に限定しているのは、意思表示と表示行為の食い違いが甚だしい場合に限定する趣旨です。

勘違いしていたら何でもかんでも錯誤であると表現するわけにはいかないということですね。
では、どのような場合に限定していくのか解釈しなければなりません。

以下、判例、かつての通説の立場で解説します。

・錯誤の分類
1、動機の錯誤
2、表示行為の錯誤
  →表示上の錯誤
  →表示行為の意味に関する錯誤

まず、錯誤には、動機の錯誤と、表示の錯誤というものがあります。以下の事例で、簡単に説明すると。

甲 →← 乙

希少本

乙は、古書の収集家で、甲書店で販売している希少本を見つけて購入した。このとき、乙は、「まだ自分はこの希少本を持っていない」と思っていた。しかし、家に帰ったら、同じ本が、すでにあった。
乙は、甲に対して、錯誤による無効を主張できるか?

甲書店に、希少本が陳列していることは、売買契約の申込に当たる。それに対して、乙の買うという承諾の意思表示を示しており、表示行為は完全になされていて、その本を買おうという効果意思もあります。
錯誤が存在するのは、「まだ自分はこの希少本を持っていない」と思っていた。という動機の部分です。

では、動機に錯誤がある場合は、錯誤を主張できるのかということが問題となります。
判例、かつての通説によれば、この希少本を買うという効果意思を意思表示の出発点として、これ以後の意志が欠けた場合が意思の欠缺=錯誤であるとしています。
それ以前の動機の錯誤については、原則として、錯誤の問題にならないとしています。
ですから、原則として、錯誤による無効を主張することはできません。

ただし、動機が意思表示の内容として表示された場合には、錯誤に含むことができるとされています。
例えば、乙が希少本を書く際に、「この希少本は持っていないので、買っておきたい。」といえば、動機であっても、意思表示の内容になり、要素の錯誤と評価されれば、錯誤無効を主張できることになります。

簡単にまとめると、

1、動機の錯誤→原則として、錯誤ではない。ただし、動機が意思表示の内容として表示された場合には、民法95条の錯誤に含むことができる。
2、表示行為の錯誤→民法95条の錯誤である。

ということです。
以上、民法95条 錯誤について、判例、かつての通説の立場の見解を紹介しました。

これから、民法の勉強を始める方は、参考にしてください。

この記事は、ゼロニュース 民法95条 錯誤とはより提供されています。

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心裡留保と虚偽表示の関係

今日は、心裡留保と虚偽表示の関係についてです。
心裡留保の条文と虚偽表示の条文をよく見ている方は、お気づきだと思いますが、心裡留保は、同時に虚偽表示でもあるわけです。

・・・参考条文・・・

(心裡留保、しんりりゅうほ)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

簡単に事例を紹介すると、

甲「売るよ」(どうせ買えないだろう)→←乙「買います」

甲は、乙が貧乏学生なので、高価な壷を買うお金もないだろうと思いつつ、冗談で、乙に壷を売ると言った。
乙は、それを真に受けて、資金を調達してきて、買うといった。

この場合、甲の「売るよ」という意思表示をしていますが、心の中では、(どうせ買えないだろう)と思っているわけです。しかし、乙が甲の「売るよ」という意思表示を真に受けて、資金を調達してきた以上、売らないと言う訳にはいきませんよというのが上記の条文の前半の意味です。
しかし、乙が甲は冗談を言っていると知っていたときや、普段から甲は人をからかう癖があることを知っていた場合などは、甲の「売るよ」という意思表示は、無効にすることができるというのが、ただし以降の意味です。

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙「買います」「(買う気はないけど)差し押さえ逃れだね。わかります。」


甲「売ります」「(売る気はないけど)差し押さえを逃れるために」

土地

債権者が差し押さえようとしている

甲が差し押さえを免れるために、甲の土地を乙に売ったことにしてしまうという場合。
甲と乙は、お互いに売ったり買ったりする気はなく、単に差し押さえ逃れ目的で売買しているだけです、このような行為は、無効だというのが1項の趣旨です。

乙→←第三者

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。

・・・以上参考条文・・・

甲(売る気なし)→←乙(買う気なし)→←第三者(善意)

甲の土地

甲は売る気がないのに、土地を乙に対して売るという。乙も甲が売る気はないことを知りつつ、買うという。
この関係は、94条の虚偽表示になるわけですが、同時に、93条の心裡留保の関係でもあるわけです。

この関係で、乙が丙に対して、土地を売った場合。
94条の虚偽表示ですから、2項によって、甲と乙の間の謀議を知らない善意の第三者は保護されることになります。

しかし、もし、甲が甲乙間の売買は、心裡留保であると主張した場合には、93条但し書きのよって、甲の「売るよ」という意思表示は、無効になります。
無効だということは、第三者丙は、無権利者から、土地を購入したことになり、丙は、善意悪意問わず、土地を甲に対して、返還しなければならないことになる。

なぜなら、93条には、第三者を保護する条文がないからです。
虚偽表示ならば、第三者が保護されるのに、心裡留保を主張されると、第三者は保護されなくなってしまう。この結論は妥当ではありませんよね。

そこで、学説は、第三者丙を保護するために、「心裡留保の事案でも、94条2項を類推適用するべきである」と主張しています。

今日は、心裡留保と虚偽表示の関係についてでした。
以上で、虚偽表示については、終わりです。

これから、民法の勉強を始める方は、参考にしてください。

この記事は、ゼロニュース心裡留保と虚偽表示の関係より提供されています。

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民法94条2項と公信力

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙→←第三者(善意)

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。

今日は、売買の対象物が不動産ではなくて、動産だったらどうなるのかという問題です。

民法においては、物を大きく二つに分けています。
ひとつは、動産。もうひとつは、不動産です。
動産および不動産の定義については、民法の条文にも掲載されています。

※参考条文
(定義)
第85条 この法律において「物」とは、有体物をいう。

(不動産及び動産)
第86条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。

ところで、これまで、94条の問題で、扱ってきたのは、すべて、不動産であった。では動産の場合は、どうなるのでしょうか。

その問題を解く前に、動産の即時取得制度について解説します。
動産は、不動産と違い、頻繁に取引されるものであるから、不動産の場合よりも、取引の安全を重視しなければ、経済活動に支障が生じます。
民法94条2項は、取引の安全に資するが、もともと虚偽表示を想定した制度であるという制約があります。

そこで、動産については、より、取引の安全を重視する「即時取得(善意取得)」という制度が設けられています。
すなわち、仮に売主が真の権利者でなくても、動産を占有しており、その外観を信頼して買主が、動産の引渡しを受けた場合には、即時に所有権を取得するというものです。(民法192条)

※参考条文
(即時取得)
第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

甲→←乙→←丙(第三者)

動産

即時取得の制度について、上記の設例を見てみましょう。
甲と乙の間で、虚偽の売買が行われたとする。動産は、乙が占有しています。
丙は、甲と乙の間の虚偽の売買を知らずに、乙から動産の引渡しを受けました。
この場合、民法94条2項によって、保護される事例のように思うかもしれませんが、動産の場合には、丙は、乙が権利者であると信じて動産を買ったのなら、引渡しの時点で、即時に所有権が丙の元に移転することになります。
そして、真の権利者である甲は、もはや、自分が権利者であることを主張することはできなくなります。

よって、動産については、民法192条の即時取得の制度が設けられているため、民法94条2項によって、第三者を保護する必要性は生じないということになるわけです。

このように、物を占有していることを信頼した買主が保護されることを「占有に公信力がある」と表現します。
一方、不動産については、登記を移転することによって、所有権が移転することになるが、それを信頼しても保護されないかもしれないわけです。
したがって、「登記には公信力がない」と表現します。
94条2項を類推適用する場面において、仮に類推適用ができないとすれば、第三者としては、泣き寝入りするしかないわけです。
しかし、民法94条2項が虚偽の売買以外の事例においても、類推適用されていることで、事実上、登記に公信力が与えられているのに近い結果が生じています。

以上、今日は、売買の対象物が不動産ではなくて、動産だったらどうなるのかという問題でした。

この記事は、ゼロニュース 民法94条2項と公信力より提供されています。

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民法94条2項の類推適用

民法94条2項は、権利外観法理の現れであると説明しました。
権利外観法理の現れであると考えられているために、本来の虚偽表示の事案以外でも、権利外観法理を適用するべきだと考えられる場面で、類推適用されることがある。
すなわち、虚偽の外観を作出する謀議はないものの、それに等しい落ち度によって、真実と違う外観を作り出した場合には、民法94条2項を類推適用しようというものです。

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙(買う気はないけど)→←第三者(乙の土地だと信じている)


甲(売る気はないけど)

土地

→民法94条2項を類推適用する場合とは、甲と乙の間には、謀議は行われないものの、それに等しい落ち度があった場合に、外観を信頼した第三者を保護しようということです。

具体的には、以下のような例が挙げられます。(上記の図を見ながらお読みください。)

甲女は乙男の妾であった。甲女は、土地を所有しており、そこで商売を営んでいた。
甲女がほかの男性と通じていることを知った乙男が激怒し、甲女の土地の所有権を自分のものにしてしまった。
やがて、甲女と乙男は和解したが、土地の登記を戻すには、手間がかかるということで、そのまま、乙男のもとにとどめて、二人は結婚した。
数年後、甲女と乙男の関係が破綻し、離婚騒動になった際に、乙男は、土地は自分のものであるとして、第三者に対して、売却してしまった。
甲女は、土地は自分のものだから返還してほしいと請求した。

厳密に解釈するならば、甲女と乙男の間には、虚偽の外観を作出する意思はないため、民法94条2項を適用することはできません。
しかし、甲女と乙男は、登記を真実の権利関係とは違うまま放置しており、虚偽の外観を作出したに等しい落ち度があるということができます。
ですから、その外観を信頼した第三者は保護されるべきであろうということで、民法94条2項を類推適用することになります。

問題は、虚偽の外観を作出したに等しい落ち度とはどの程度のものである必要があるのかということです。
いくつかの学説がありますが、主に、二通りの考え方があります。
1、虚偽の登記が存在していることを知った時点で、虚偽表示に準じる状態に入るという説。
2、偽りの登記が存在するだけでなく、積極的に承認したといえる程度の関与が必要だという説。

1の説の場合だと、虚偽の登記が存在することを知った時点から、虚偽表示に準じる状態になるということですから、その直後に第三者が現れたら、もはや、権利の主張ができなくなってしまいます。これではあまりに、厳しすぎるであろうということで、2の用に積極的な関与も必要とするのが妥当であろう。判例も、2の見解にたっているといわれています。

このように、民法94条2項は、適用範囲が広く、特に、不動産の登記に関しては、重要な役割を果たすようになっています。

以上、今日は、民法94条2項の類推適用という話でした。

この記事の詳細は、ゼロニュース 民法94条2項の類推適用 でご覧ください。

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虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その3 第三者に登記は必要か

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙→←第三者(善意)

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。

今日は、94条2項の第三者が保護されるためには、登記が必要かどうかという問題です。
以下の設例で考えて見ましょう。

甲→←乙(登記)→←丙(善意の第三者)

甲の土地の不動産登記簿は、乙が所有している。

甲と乙の不動産売買は虚偽表示である。乙は、丙に対して、甲の不動産を売却したが、登記はまだ、乙の元にあった。
やがて、甲は、乙に対して、虚偽の売買だったのだから、土地を返還するように求めた。
この場合、第三者である丙が保護されるためには、不動産登記簿をも有していなければならないのだろうか?

※前提知識
この問題を解く前提知識として、不動産登記簿の制度について簡単に説明する。

甲→←乙→←丙
乙の不動産

乙が所有する不動産を、甲と丙に売却した場合、どちらが所有権を取得することができるのか?
売買契約は、申込と承諾の意思表示によって成立するから、甲も兵も有効な売買契約の買主である。甲と丙どちらも、自分に土地を明け渡せと主張することができる。
しかし、不動産は、ひとつしかない。甲と丙で分割することはできないし、そもそも、分割した土地を買う契約ではなかったはずだ。

そこで、甲と丙どちらが所有権を取得することになるのが、決めておく必要がある。
先に売買契約を締結したほうが所有権を取得するというのが一般常識かもしれない。しかし、不動産については、高額な財産ということもあり、単に先に売買契約を締結したものが所有権を取得できるとはしなかった。
より、慎重な取引を求めて、先に不動産登記をしたものが所有権を取得することとした。(民法177条)

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

以上、前提知識

さて、上記の設例に戻る。
甲は、乙に対して、虚偽の売買だったのだから、土地を返還するように求めた場合、第三者である丙が保護されるためには、不動産登記簿をも有していなければならないのだろうか?
この設例を見れば、確かに、甲と丙が二重譲渡の関係に立っているように思うかもしれない。
となれば、登記の前後で、優先順序が決まるということになるかもしれない。

しかし、判例、痛切はそう考えていません。
なぜなら、94条2項の趣旨は、丙との関係では、売買契約が有効になされているという扱うわけですから、所有権は、有効に甲→乙→丙と移転していることになる。
したがって、甲と丙との関係は、前主、後主の関係であり、二重譲渡の関係に立たないということになる。
このように考えると、丙は、甲に対して、完全な所有権を主張でき、登記の移転を請求することもできる、

よって、94条2項の第三者である丙が保護されるためには、登記は必要ないということになるわけです。

以上、今日は、94条2項の第三者が保護されるためには、登記が必要かどうかという問題でした。

この記事の詳細は、ゼロニュース 虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その3 第三者に登記は必要かでご覧ください。

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虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その2 第三者の範囲

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙→←第三者

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。
なぜ、第三者に対してこれほどの保護を与えたのかというと、まず第一に、甲と乙が自ら進んで、虚偽の外観を作り出したということは、自業自得だということがあげられる。第二に、善意の第三者を保護しなければ、取引の安全が害されるということもあります。

・では、以下のような場合はどうなるでしょうか。
乙→←丙(悪意)→←丁(善意)

甲の土地

第三者である丙は、甲と乙の売買が虚偽表示であることについて悪意であった。94条2項によれば、第三者は、善意でなければ保護されないので、丙が、保護されない、つまり、甲は、依然として、丙に対して、土地を返還するように要求することができることになる。
では、丙が善意の丁に対して、土地を売却してしまった場合には、丁は保護されるのだろうか?

※法律用語の確認 善意→知らない 悪意→知っている

第三者の範囲はどこまで広がるのかという問題です。
結論から言うと、第三者というのは、売買の当事者から、直接取得した者だけではありません。第三者から取得した者、上記の例では、丁も、第三者として扱われます。
ですから、丁が善意であるならば、丁は、94条2項の第三者として保護されることになります。

・では、以下のケースではどうなるでしょうか。
乙→←丙(善意)→←丁(悪意)

甲の土地

第三者である丙は、甲と乙の売買が虚偽表示であることについて善意であった。善意の丙が94条2項で保護されるということは言うまでもない。しかし、丙から土地を取得した丁は、甲と乙の売買が虚偽表示であることについて悪意であった。この場合、丁は、94条2項の第三者として保護されるのであろうか?

考え方は、二つあります。

まず、「絶対的構成」という考え方
取引の安全を重視し、いったん、善意の丙の手に土地がわたっている以上、甲は、もはや誰に対しても文句が言えない。つまり、丁に返せと要求することはできないという考えです。

なぜか? 以下の図をご覧ください。
丁→(売買代金の返還請求)→丙→(同)→乙→(同)→甲
↓返還
甲 甲の土地

もし、仮に、甲が丁に対して、土地を返還するように要求できるとすれば、丁は、丙に対して、土地の売買代金を返還するように要求することができるからです。(民法561条) もちろん、丙も乙に対して、返還請求することができますが、大変な手間ですし、乙が無資力になっているかもしれないというリスクも負うことになるわけです。
これでは、善意の第三者を保護する意味がなくなってしまいますから、善意の丙の手に土地がわたっている以上、甲は、土地を返すようにということを、丙に対してはもちろんのこと、丁に対しても返還要求することができないということになります。
甲としては、善意の丙に土地が渡った時点で、あきらめたはずであり、その後、たまたま、悪意の丁の手に渡ったからといって、甲の返還要求を認める必要もないわけですから、絶対的構成が妥当といえるでしょう。

一方、絶対的構成に対して異議を唱えるのが、「相対的構成」です。
すなわち、94条2項の第三者は、一人一人判断するべきであり、善意の丙は保護されるにしても、悪意の丁は、保護するべきではないという考え方です。

もしも、善意の丙に渡った時点で、甲が文句をいえないということになると、甲の土地を取得したいと思っている悪意の丁は、善意の丙をあたかもわら人形のようにはさむことで、その目的を成し遂げてしまうことができることになる。
例えば、悪意の丁が、甲乙の虚偽表示について善意の友人丙に「後で、自分が買うから、とりあえず、土地を買っておいてくれ」と頼んで、丙が土地を買うだけで、丁も第三者として保護されてしまうことになるわけです。
これでは、道徳的に考えても妥当ではないということで、第三者については、個別に判断していく必要があると解することになります。

絶対的構成、相対的構成は、試験でもよく出題される分野です。しっかり勉強しましょう。

以上、今日は、94条2項の第三者の範囲についてでした。

この記事の続きは、虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その2 第三者の範囲でご覧ください。

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民法94条2項の根底にある権利外観法理

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙→←第三者

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。
なぜ、第三者に対してこれほどの保護を与えたのかというと、まず第一に、甲と乙が自ら進んで、虚偽の外観を作り出したということは、自業自得だということがあげられる。第二に、善意の第三者を保護しなければ、取引の安全が害されるということもあります。

では、なぜ、これほどの保護を第三者に与えたのだろうか?

どんな法律にも立法趣旨というものがあります。なぜ、この法律を定めたのか?この法律を定めることで、どんな目的を成し遂げようとしているのか?
法律の条文は解釈を行わなければならないと、以前、説明しましたが、法解釈を行う際に、大切なことが立法趣旨を考えるということです。
この事例ではどうなるの?と思ったときに、その条文はどのような意図を持ってつくられたのかについて、考えると、法解釈の際も、妥当な結論を導くことができます。

さて、民法94条2項にも、立法趣旨があります。
だた、民法の場合は、古くはローマ法にも通じる伝統的な法律ですから、立法趣旨というよりも、法の根本にある法原則というものを意識するべき条文もあります。民法94条2項はその代表例です。

その法原則とは、
「真の権利者が自分以外の者が権利者であるかのような外観を作り出した場合には、それを信頼した第三者は、保護されるべきであり、自ら外観を作った権利者は、権利を失ってもやむを得ない」
というものです。
この法原則のことを、表見法理とか権利外観法理と呼びます。

上記図で説明しているように、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、第三者は保護されるべきであるという場面は、まさに、権利外観法理を適用するべき場面ということができます。

第三者の善意とは?

第三者は、外観を信頼したからこそ保護されるということでしたら、単に、虚偽表示であることを知らないだけでなくて、信頼するべき外観がなければ、保護に値しないと考えることができます。
たとえ、現実に外観を信頼していたとしても、それが不注意に由来するものであり、実際には、信頼に値する外観などはなかったというような場合には、保護する必要がないということになるわけです。

そこで、現在の学説の有力説によれば、第三者は、単に、善意であるだけでなく、無過失でなければならないとしています。

※善意→単に知らないという意味 無過失→十分な調査を行い、不注意ではなかったという意味。

例えば、上記の図で考えると、
第三者は、乙から土地を購入する場合、当然、不動産登記簿が乙の元にあることを調べるべきであり、仮に、表面上の売買契約だけで、登記が移転していなかったような場合は、それを信頼して土地を購入するのは不注意である(過失がある)から、第三者は、保護に値しないと考えることができるわけです。
民法94条2項が権利外観法理の現れであると考えると、第三者が保護されるためには、善意に加えて、無過失も要求するほうが一貫した解釈となります。また、権利外観法理の現われと見られる他の規定では、第三者が保護されるべき要件として無過失を要求していることが多いわけですから、他の条文との整合性も考慮する必要があります。

しかし、判例、通説では、文言どおり、善意のみを要求しています。
その理由としては、当事者が意図的に虚偽表示をしているのに、第三者が保護されるために、虚偽表示の有無についての調査義務を課せられるのは妥当ではないという点を指摘しています。

以上。今日は、94条2項の根底にある権利外観法理という法原則について説明しました。

この記事は、ゼロニュース 民法94条2項の根底にある権利外観法理より提供されています。

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宅建、行政書士試験合格のためには民法を極めよ

民法は、宅建・行政書士試験の両方の試験で重要科目のひとつとなっています。
行政書士試験では、9~10問、さらに記述式でも2問
宅地建物取引主任者試験では、権利関係の分野で約10問
民法をおろそかにしていては合格できません。逆に言えば、民法さえ極めてしまえば、資格試験合格がぐっと近くなりますし、行政書士と宅建ぐらいなら、両方とも、比較的簡単に合格できてしまうということです。
民法は、日常用語とは違う、独特の表現も出てきます。初めて勉強する方にとっては、外国語のように感じるかもしれません。独学で勉強していると理解できなくて、とにかく字面だけを覚えてしまおうとしてしまいがちです。
そうすると、民法の用語を見ただけでいやになってしまうものです。
民法の仕組みを理解するためには、図で考えるということが大切です。
民法のテキストを読んでいると、
「甲から乙に所有権が移転する・・・」
というような表現がいくつも出てくると思いますが、実際に甲乙で図を描いてみると、理解しやすくなります。
講義では、講師が黒板にその図を書いて説明していますから、テキストを読んでいるだけでは理解できないという場合は、講師の説明をよく聞いていると理解しやすくなるはずです。
初めて勉強する場合は、テキストを早く読んでいこうとするのではなく・・・

この記事の続きは、宅建、行政書士試験合格のためには民法を極めよで御覧ください。

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虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その1

今日は、虚偽表示について解説していきます。虚偽表示は、民法総則の中でも、もっとも重要な制度のひとつです。

(虚偽表示、きょぎひょうじ)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

乙「買います」「(買う気はないけど)差し押さえ逃れだね。わかります。」


甲「売ります」「(売る気はないけど)差し押さえを逃れるために」

土地

債権者が差し押さえようとしている

甲が差し押さえを免れるために、甲の土地を乙に売ったことにしてしまうという場合。
甲と乙は、お互いに売ったり買ったりする気はなく、単に差し押さえ逃れ目的で売買しているだけです、このような行為は、無効だというのが1項の趣旨です。

乙→←第三者

甲の土地

2項は、乙の手に渡った土地を、甲と乙の間の謀議を知らない第三者が、購入した場合は、甲と乙の間の売買契約が無効だから、買うことができませんよと第三者に対して主張することができないということです。

※善意というのは法律用語で、いい人という意味ではなく、甲と乙の間の謀議を「知らない」という意味です。

以上が条文の簡単な解説です。
心裡留保と違い虚偽表示の場合は、契約の当事者である甲と乙の両者がお互いに、買う気も売る気もないのに契約しているということです。
もともと、両者とも、買う気も売る気もないのだから、契約の効力を生じせしめる必要はない。というのは、当たり前のことですよね。なぜこのような規定がおかれているのかというと、上記の解説にあるように、差し押さえ逃れのために、財産を移動してしまうということを防ぐことが趣旨とされています。

もっとも、表面上は、有効に売買契約が成立しているわけで、両者の内面が買う気も売る気もないというものなのですから、虚偽表示であることを立証していくことは大変困難といわれています。ですから、上記のような差し押さえ逃れのケースでは、虚偽表示よりも、債権者取消権(民法424条)を利用することになります。

むしろ、94条の条文の真骨頂は、2項のほうにあります。
仮に差し押さえの騒動が一段落したとして、甲が乙に対して、土地を返してくれと請求したとする。
しかし、乙は、自分のところに登記名義があることをいいことに、甲と乙の間の謀議を知らない第三者に対して、土地を売ってしまっていた。

この場合どうするべきか?
94条1項によって、虚偽表示による契約は無効とされているわけですから、本来は、甲と乙の契約は無効ということになり、表面上は、乙に登記が移転していても、乙は、所有権を有していないということになるわけです。
所有権を有していない乙から、第三者が、土地を購入したとしても、他人の土地を勝手に売っているのと同じですから、売買契約は成立しないはずです。
すると、甲としては、第三者が持っている土地は本来自分のものだから返してくれといえることになる。
しかし、それでは、甲と乙の虚偽表示による売買を知らない第三者が、損害を蒙ることになってしまうわけです。

そこで、94条2項では、甲と乙の虚偽表示を知らない(善意の)第三者を保護し、甲(もちろん、乙も)は、第三者に対して、「甲乙の売買は虚偽表示だから、所有権は移転していないのだから、返してくれ」と、請求することはできないということにしました。

なぜ、第三者に対してこれほどの保護を与えたのかというと、まず第一に、甲と乙が自ら進んで、虚偽の外観を作り出したということは、自業自得だということがあげられる。第二に、善意の第三者を保護しなければ、取引の安全が害されるということもあります。

この記事は、ゼロニュース 虚偽表示、きょぎひょうじ(民法94条)その1より提供されています。

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心裡留保、しんりりゅうほ (民法93条)

今日は、心裡留保について詳しく解説していきます。

(心裡留保、しんりりゅうほ)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

簡単に事例を紹介すると、

甲「売るよ」(どうせ買えないだろう)→←乙「買います」

甲は、乙が貧乏学生なので、高価な壷を買うお金もないだろうと思いつつ、冗談で、乙に壷を売ると言った。
乙は、それを真に受けて、資金を調達してきて、買うといった。

この場合、甲の「売るよ」という意思表示をしていますが、心の中では、(どうせ買えないだろう)と思っているわけです。しかし、乙が甲の「売るよ」という意思表示を真に受けて、資金を調達してきた以上、売らないと言う訳にはいきませんよというのが上記の条文の前半の意味です。
しかし、乙が甲は冗談を言っていると知っていたときや、普段から甲は人をからかう癖があることを知っていた場合などは、甲の「売るよ」という意思表示は、無効にすることができるというのが、ただし以降の意味です。一般常識で考えても、妥当な結論ですよね。

さて、心裡留保の場合は、原則として、甲の「売るよ」という意思表示は有効になり、例外的に、乙が甲の真意を知りえた場合にのみ、無効にすることができるということですが、無効の主張は誰ができるのでしょうか?

甲の「売るよ」という意思表示が無効になると、得するのは、甲ですよね。
ですから、この場合は、甲自身が、甲の(どうせ買えないだろう)という真意を知りつつ、乙は買うと言ったということを立証しなければならないことになります。
このことを「甲に立証責任がある」と表現します。

では、乙から、心裡留保の無効を主張することはできるのでしょうか。
いったんは、乙が買うといったものの、後になって、甲の(どうせ買えないだろう)という真意を知り、それなら、買わないということができるのか?

心裡留保の規定の趣旨は、甲の(どうせ買えないだろう)という真意を知らずに、契約した乙を保護することにあるわけです。
乙が資金を調達してきた後になって、甲が「あれは、冗談だったんだ」と言って、乙を困らせるようなことをしてはいけないという趣旨です。
ですから、乙自身が、「それなら、あの話はなかったことにしよう」と主張するのは一向に構わないということになります。常識的に考えても妥当ですよね。

最後にもうひとつ問題となるのが、どの程度の契約に対して心裡留保の規定が適用されるのかという問題があります。

契約というのは、甲と乙の約束に対して、一定の法的拘束力を与えるものです。法的拘束力を与えるものである以上、ある程度しっかりした契約でなければならないわけです。
上記の設例の

甲「売るよ」(どうせ買えないだろう)→←乙「買います」

という、契約関係は、甲の真意はともかくとして、表面上は、有効に売買契約が成立しているわけです。しっかりした契約関係にあるわけですね。

しかし、われわれの日常生活の中では、いろいろな約束はするものの、それがすべて法的拘束力があるわけではありません。
例えば、恋人同士が「明日、デートに行こうね。」と約束したとして、それが法的な拘束力を持つということはないことは、常識的に考えてもわかると思います。

では、以下のような事例ではどうでしょうか。

男「独立資金を与えるよ」(冗談)→←キャバクラ嬢「ウレシス!」(本気)

男が、キャバクラ嬢の歓心を買おうと思って、将来独立するときに資金をあげると言った。男は、本気で資金を与えるつもりはなかったが、後日、真に受けたキャバクラ嬢が、約束どおり、資金をください。とストーカーみたいに迫って来た。しかし、男は、あれは冗談で言っただけだから、あげられないと拒否した。(大判昭和10年4月25日カフェー丸玉女給事件を現代風にアレンジ)
この場合、心裡留保の規定を適用して、キャバクラ嬢を保護するべきであろうか?

一般常識で考えれば、客席でこのような戯言を言うのは日常的なことで、本気にしたキャバクラ嬢がおかしい。しかも、念書でも書いているわけでもないでしょ。だから、契約とはいえないし、キャバクラ嬢を保護する必要はない。と考えると思います。

昭和10年当時の最高裁にあたる大審院も、同じ結論を出しました。
ただし、ちょっと専門的な解釈で結論を出しています。
大審院は、「約束者が自ら、進んで履行すれば有効な債務の履行となるが、相手方から履行を強要することのできない特殊な債務関係がありうる。本件は、そのようなものであった可能性がある。」として、女給の請求を退けました。
このように契約としての完全な拘束力を持たない契約のことをローマ法以来の言葉で「自然債務」と呼ぶことがあります。

要するに、すべての約束が、法的に完全な拘束力を有することになるわけではないということです。法的に完全な拘束力を持たない契約=自然債務については、心裡留保の規定も適用されません。
ですから、「自然債務には、心裡留保の規定が適用されない。」ということです。
どこまでが、自然債務となるのか、どこからから、完全な契約になるのかということは、非常に難しい問題で、最終的には、社会常識などから、総合的に判断しなければなりません。

ただ、試験では、これが自然債務なのか完全な契約といえるのかというような問題が出されることはありませんので、「自然債務には、心裡留保の規定が適用されない。」ということを覚えておけば十分です。

以上、心裡留保について解説しました。

この記事の詳細は、ゼロニュース心裡留保、しんりりゅうほ (民法93条)でご覧ください。

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宅建の民法 意思表示の分析

これまでは、契約とは、申込の意思表示と承諾の意思表示が合致することで成立すると説明してきました。
今日は、この意思表示について、意思表示をする人の内面に迫って細かく見ていきます。

なぜ、こんなことをするのかというと、表示したことと心の中で思っていることが一致しないことがあるからです。

例えば、以下のような場合。

甲→←乙 意思表示「買います」 内心の意思(高価な壷だ)

壷(実は価値がない)

乙は甲から高額な壷を買った。乙は、これの壷が由緒ある高級な壷だと心の中で思って買ったのだが、実際には、安物の価値のない壷であった。

この場合は、表面上は、有効に甲と乙の間に売買契約が成立することになりますが、乙は心の中では、まったく違うことを考えているわけです。
なぜ、こうなってしまったのかというと、甲がだましたことや、乙が勝手に勘違いしたとか、甲も乙も高額な壷だと思っていたというようなケースが想定できると思います。
このように、意思表示と内心の意思が一致していない場合まで、契約が有効に成立していると考えてもよいのだろうか?という問題です。

一般常識で考えれば、だましたなら、契約は成立させるべきでないと考えるべきでしょうし、お互いに勘違いしていたなら仕方ないというふうに考えるかもしれません。
民法でも、一般常識に照らして、条文の規定をおいています。

以下、この問題に関係ある条文を紹介しながら簡単に解説します。

(心裡留保、しんりりゅうほ)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

簡単に事例を紹介すると、

甲「売るよ」(どうせ買えないだろう)→←乙「買います」

甲は、乙が貧乏学生なので、高価な壷を買うお金もないだろうと思いつつ、冗談で、乙に壷を売ると言った。
乙は、それを真に受けて、資金を調達してきて、買うといった。

この場合、甲の「売るよ」という意思表示をしていますが、心の中では、(どうせ買えないだろう)と思っているわけです。しかし、乙が甲の「売るよ」という意思表示を真に受けて、資金を調達してきた以上、売らないと言う訳にはいきませんよというのが上記の条文の前半の意味です。
しかし、乙が甲は冗談を言っていると知っていたときや、普段から甲は人をからかう癖があることを知っていた場合などは、甲の「売るよ」という意思表示は、無効にすることができるというのが・・・

この記事の続きは、宅建・宅地建物取引主任者試験勉強のワンポイント講座でご覧ください。

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隔地者間の契約 メールや手紙での契約

メールやインターネットを利用しての契約が今日では当たり前のように行われています。
今は、メールやインターネットでは、瞬時に相手に届きますから、メールやインターネットを使って、契約をしていても、相手との距離を感じないかもしれません。
しかし、メールやインターネットを利用しての契約は、対面の契約と違い、時間的なずれがあることは否めません。

メールやインターネットを郵便に置き換えて考えるとよりわかりやすくなりますが、こちらの手紙が相手に届くまでの間、時間がかかります。一方、相手から、返事の手紙が届くまでも、時間がかかるわけです。

対面の契約と違い、時間的なずれがあるため、どの時点で、契約が成立しているのかということが問題になります。

以下の事例で考えて見ましょう。

甲(買主)→←乙商店(売主)
  手紙による売買

甲が乙が売っている商品を買おうと思って、乙に対して、買いますという手紙を出した。

甲が買いますという手紙を乙に対して出す行為は、契約で言えば、申込にあたります。
では、契約の申込は、いつの時点でなされているといえるのでしょうか。甲が手紙を出した時点で、契約の申込がなされていることになるのか、乙のところに届いたところで契約の申込がなされているのかという問題です。

もしも、甲が契約の申込をした時点で、契約の申込があったとされると、仮に、手紙が乙のところに届かなかった場合でも、甲が意思表示をしていることになってしまいます。これではおかしいですよね。ずっと赤の他人であった甲と乙であるのに、乙の知らないところで契約の申込がなされていて、何も知らされないままに、契約関係成立に向けた交渉過程に入っているのは常識的に考えてもおかしいわけです。

そこで、乙のところに届いたところで契約の申込がなされていると見ると、乙としても、甲の意思表示を知ることができるわけですし、不意打ち的に契約関係成立に向けた交渉過程に入ることもないわけです。
常識で考えても、甲も手紙を書いた時点で、乙がその内容を知っていると考えることはないわけで、乙が読まなければ、内容を知ることはないことを理解しているはずです。
よって、相手のところに届いたところで契約の申込がなされていることになります。(到達主義)

※参考条文
(隔地者に対する意思表示)
第97条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

では、次に行きます。
乙は、甲の手紙を読んで、売りますと旨の手紙を甲に対して発信した。

売りますと旨の手紙を甲に対して発信する行為は、契約で言えば、承諾に当たるわけです。

では、承諾は、いつの時点でなされているといえるのでしょうか。乙が手紙を出した時点で、契約の承諾がなされていることになるのか、甲のところに届いた辞典で契約の承諾がなされたことになるのかという問題です。
申込の場合と同じように、甲のところに届いた時点で、承諾がなされていると考えるべきなのではないかと思うかもしれません、
しかし、承諾については、乙が手紙を出した時点でなされていることになります。(発信主義)

※参考条文
(隔地者間の契約の成立時期)
第526条 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
2 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

なぜ申込と承諾とで違っているのか?

通常、売主としては、承諾の手紙を書いた後、出荷準備に入っていることが多いですよね。注文があった以上は、迅速にお客様に届けるべきですからね。
それなのに、承諾の手紙が、お客様の元に届かなければ、契約が成立していませんよというのでは、取引の安全を害することになります。
それに、承諾の通知がお客様の元に届かなければ、契約が成立していないとするのでは、いちいち、手紙が届いたかどうか確認してから、商品の出荷準備に入らなければならないわけで、非常にわずらわしくなります。
ですから、商取引の安全を考慮して、承諾については、手紙を出した時点で効力が生じるという発信主義を採用しているわけです。

この記事の詳細はゼロニュース 隔地者間の契約 メールや手紙での契約でご覧ください。

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契約は申込と承諾によって成立する

契約というのは、どのようにして成立するのだろう。ということを今日は、分析していきたいと思います。

契約というのは、「申込の意思表示と承諾の意思表示が合致することで成立する。」と民法の基本書などには書かれています。

甲が所有する「「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)」を乙が買おうとしている場合。
乙の買いますという申込の意思表示に対して、甲がいいですよという承諾の意思表示をすることで、売買契約が成立するということです。

日常生活の中では、契約の申込と承諾の意思表示というふうに厳格に意識はしていないかもしれませんが、物を買うときは必ず、申込と承諾の意思表示があって、売買契約が成立していくことになるわけです。

もう少し考えて見ましょう。
たとえば、乙が、「「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)」を200円で売ってくれといったのに対して、甲はいやだめだ、定価でなければ売らないと応じた。乙はそれなら仕方ない、定価で買おうと意思表示した。

この場合、申込はどれに当たるのでしょうか。
最初の200円で買うという乙の申込の意思表示に対して、甲は定価でなければ売らないとしていったん拒絶しています。甲と乙の意思表示は合致しておらず、この時点では、売買契約は成立していません。
一方、甲は、定価なら売るという意思表示をしていて、それに対して、乙はそれなら定価で買おうと応じています。
ということは、甲は、申込の拒絶とともに、定価なら売るという新たな申込をしていると見ることができます。それに対して、乙がそれなら定価で買おうと承諾していると見ることができるわけです。
つまり、甲の、定価なら売るという意思表示が申込に当たるということです。

民法でも、このような事態が起こることを想定しており、甲が行ったような申込に変更を加えた承諾を乙の申込に対する承諾の拒絶とともに新たな申込をしたものとみなしています。(民法528条)

※参考条文(申込みに変更を加えた承諾)
第528条 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

また、申込の意思表示や承諾の意思表示は、何も、口頭で「買います」「売ります」という意思表示をしなくても成立します。
たとえば、私たちが、日常、スーパーで買い物をする場合、いちいち、これをください。はい、売りますよというような掛け声はしませんよね。
陳列棚から、商品を取ってきて、レジに出すだけです。
スーパーの場合は、商品を陳列棚においておくこと自体が申込と見ることができます。それに対して、私たちが、商品を選んで、レジのところに持っていくことで、承諾という暗黙の行動を取っていると見ることができるわけです。

では、以下のように、広告をべたっと張ってある。これは売買契約で言えば、何に当たるのでしょうか。

これは、売買契約でいえば、申込にあたることになります。
通常、アマゾンは、商品を売らないと拒絶することはありませんし、お客様が注文すれば迅速に商品を届けてくれます。
ですから、アマゾンは、サイト上に商品を陳列することで常に申込をしているわけで、それに対して、私たちがこの商品を買おうと承諾することで、売買契約が成立していくことになります。
もちろん、お金の支払いや商品の発送は、時間的にずれることになりますが、契約の履行時期の問題であって、売買契約自体は、カートに入れて、注文を確定した時点で成立するということです。

この記事の詳細は、ゼロニュース 契約は申込と承諾によって成立するでご覧ください。

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民法の基本は契約と所有権

初めて、民法を勉強する方にとって、大切なことは、民法の全体像を掴むことです。今日は、簡単に民法の全体像を紹介します。
民法は、全部で、1044条まであるわけですが、大きく分けると以下のような構成になっています。

1、民法総則
2、物権法→占有権、所有権、制限物権、担保物権 
3、債権法→契約、事務管理、不当利得、不法行為法
4、親族法
5、相続法

民法総則には民法全体に通用する基本的な条文が定められています。
たとえば、以下のような条文があります。

(基本原則)
第1条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

職場のスローガンみたいな抽象的な文言ですよね。民法総則には、このような抽象的な条文が掲載されているわけで、初めて勉強する方にとっては、退屈な話だと思ったり、理解できなくて、民法が嫌いになったりする原因になりやすいです。

民法総則を勉強する際に重要なことは、民法が想定している人間関係を理解しておくということです。

たとえば、以下のような人間関係を知っておくとわかりやすいでしょう。

甲→←乙  丙
↓  ↓
物a  物b

1、甲と乙という人がいて、それぞれ、自分の財産、a、bを所有しています。
2、甲乙は、それぞれ約束して、物a、bを交換しようとする。
3、一方、丙は、甲や乙もまたは、その財産に対して、侵害行為を行おうとするものである。

まず、「1、甲と乙という人がいて、それぞれ、自分の財産、a、bを所有しています。」について
物を所有しているという単純な関係ですのでわかりやすいと思います。ただ、所有しているといっても、占有権なのか、所有権なのか、そして、物に対しては、担保権が設定されていないのかどうかということを物権法で勉強することになります。

次に、「甲乙は、それぞれ約束して、物a、bを交換しようとする。」について
約束して交換するという関係は、簡単に言えば、契約関係ということです。契約関係については、お互いに権利と義務を負うということになるわけで、どのような権利や義務があるのかということを、債権法で勉強することになります。

最後に、「3、一方、丙は、甲や乙もまたは、その財産に対して、侵害行為を行おうとするものである。」
侵害行為が行われた場合には、どうするべきかということです。侵害行為とは、たとえば、物を盗むとか、壊したりすることですね。
前回説明したように、盗まれたから、警察に届け出るというのは、民法の話ではなくて、刑法の話になります。
民法では、物を取られたり、壊されたりする不法行為が行われた場合には、物を盗んだ人に返せと返還請求したり、壊した物を弁償しろと請求することができると定めています。

このような関係を理解しておけば、民法の勉強はかなり楽になります。
民法総則では、どのようなことを勉強するかというと、たとえば、甲という人が、未成年者だったら、契約の際どうしたらいいのとか、甲と乙の間の契約を代理人が行う場合はどうしたらいいのなどのように、上記の人間関係を前提とした上で、総合的に判断していくということになります。

これから、民法の勉強を始める方は、参考にしてください。

この記事の詳細は、ゼロニュース 民法の基本は契約と所有権でご覧ください。

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民法は、私法の一般法

今日は、民法は、私法の一般法であるという話です。
民法という法律は、文字通り「市民のための法」ですから、市民の間の法律関係を規定している法律であることはわかると思います。

たとえば、甲と乙が土地の売買契約をする場合に、どのようなルールが必要なのかを規定しているのが民法ということです。

甲 →← 乙
↓    ↓
土地   お金

甲が持っている不動産を乙に売り渡すという売買契約を考えると
乙が甲に対して、お金を支払って、甲が乙に対して、土地を明け渡せば、何の問題もないわけです。

しかし、
乙がお金を支払わない場合はどうするのか
甲が土地を引き渡さない場合はどうするのか。

もしも、民法という法律がなければ、
甲は、暴力に訴えてでも、乙からお金を取ってくることになるでしょうし、
乙は、甲を無理やり退去させて、土地を奪ってしまう
というような争いがおきかねません。

このような状態を、ロックの市民政府論の言葉で言えば、自然状態と呼びます。
このような状態にならないように、人々は、国家を作ること合意して、国家権力によって、裏付けられたルールにのっとり、他人の侵害を罰したり、約束を守らせるようにしたわけです。

たとえば、乙がお金を支払わない場合は、甲は、裁判所に訴えて、乙は甲に代金を支払えという判決をもらうことができ、それでも、乙がお金を払わない場合は、乙の財産を差し押さえ、競売にかけてでも、お金を回収することができるわけです。
一方、甲が土地を明け渡さない場合は、乙は、裁判所に訴えて、甲は、お金と引き換えに土地を明け渡せという判決をもらうことができ、それでも、明け渡さない場合は、執行官によって、強制的に明け渡しをさせることができることになります。

国家権力によって、裏付けられたルールの中には、このような市民と市民の間だけの私法関係だけでなく、国と市民の関係を定めた法律も存在します。
たとえば、上記の例で、甲が乙の家に押し入ってお金を盗んだという場合は、窃盗罪として警察に逮捕されてしまうわけです。
このことは、刑法という法律に規定があるわけですが、刑法は、市民と市民の間の関係を定めたものではなくて、国家と市民の間の関係を定めたものです。
他人の財産を奪ったものは、一定期間、国家が捕らえて社会から隔離するというサンクションを与えるわけで、ここには、市民と市民の関係ではなく、国家と市民の関係が成り立っています。
このように、国家と市民の関係を定めたのが公法と呼ばれています。

初めて、法律の勉強をする時によくある勘違いが
人のものを盗むことは、市民と市民の間の関係だから、民法に人のものを盗んではいけないという規定があって、民法にのっとって、警察が動いていると考えてしまうことです。

しかし、民法は、あくまでも、市民と市民の間の関係だけを規定しているのであって、相手に対して、罰則を与えるという規定は存在しません。
もしも、約束を守らなかったら、裁判所に訴えて、約束を守らせることができますよということを規定しているに過ぎないということです。
それが刑法に触れるように違法な方法で行われた場合には、民法ではなくて、刑法によって、違反者を処罰していくということになるわけです。

よく、裁判の話を聞いていると、民事裁判と刑事裁判という言葉を聞くと思いますが、民法の法律関係と、刑法の法律関係は別のものという表れです。
また、警察は民事不介入であるという言葉も聞くと思いますが、それも、民法と刑法は別のものであることを意味しているわけです。

この記事の詳細は、民法は、私法の一般法でご覧ください。

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契約とは何か?

今日は、契約とは何かという話です。
契約というのは、日常生活では、あまり、耳にする機会がないかもしれません。
会社で、契約書みたいなものに触れる機会はあっても、日常生活では、不動産の売買とかで、売買契約書を手にすることくらいだと思います。

でも、私たちの日常生活でも、契約はいたるところに存在します。
何も、不動産などの高額な財産を売買するときだけでなくて、
スーパーで野菜を買うことも、スーパーとお客様の間の売買契約に該当します。

もちろん、スーパーで買い物をするのに、わざわざ、スーパーとお客様の間で、売買契約書を交わすことはありません。
しかし、契約というのは、売買契約書等の書面を交わさなくても、口頭だけでも、契約は成立するわけです。(対面主義)
売買契約書を交わすという行為は、一種の儀式みたいなものということができます。

契約というのは、民法上の制度のひとつです。
民法の条文でも、521条~696条に契約に関する事項が書かれています。
条文上は、521条~696条に鹿、契約に関する条文がありませんが、それ以外の条文についても、基本的には、売買契約のような契約関係を前提とした条文です。
民法を勉強すること≒契約法の勉強ともいい得るくらい、契約関係というものが重要になってきます。

さて、契約は、民法上の制度です。
民法という法律に定められている以上、一定の拘束力があります。
拘束力というのは、もし、契約が履行されない場合は、裁判所に訴えて、財産を差し押さえたり、強制執行したりして、お金を取り立てることができるという意味です。

たとえば、甲と乙の間で、甲の車を乙に売る売買契約をしたとして、
乙がお金を持ってきたのに、甲がやっぱり売らないという場合は、乙としては、裁判所に訴えて、「代金と引き換えに車を引き渡せ」という判決をもらって、執行官に車を強制的に持ってきてもらうことができることになります。
逆に、甲が乙に車を渡したのに、代金を支払わない場合は、「乙は、甲に対して、代金を支払え」という判決をもらって、それでも、乙が支払わないときには、乙の財産を差し押さえ、強制執行してでも、代金を取り立てることができるようになるわけです。

もちろん、道徳的に考えても、いったん約束したことについては、守るべきだということがいいうるもしれません。約束を守らない人は、不道徳だと非難できるかもしれません。
ところが、甲なり、乙なりが、「どうせ、自分は不道徳な人間だ」と、居直ってしまえば、暴力に訴えたりして取ったりするしかなくなってしまうわけです。
それでは、社会秩序は維持できなくなってしまいます。下手すれば、戦国時代になってしまうわけですね。

そうならないように、上記のように、契約を守らない場合には、強制的に取り立てることのできる制度を定めることで、社会秩序の維持を図っているわけです。

以上、契約について、簡単に紹介しました。

この記事の続きは、契約とは何か?でご覧ください。

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民法の解釈とは?

民法を学ぶということは、民法を理解して、実際の法的紛争を解決できる能力を養うということです。

民法の条文を見てみるとわかると思いますが、以下のように非常に抽象的な言葉で書かれています。

(公序良俗)
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

これだけ見ても、何のことかわからない方が多いと思います。

公の秩序って何?、善良の風俗って何?、法律行為って何?

疑問だらけだと思います。
民法の条文では、上記のような抽象的な言葉が1044条も続いています。
その条文を暗記するのが、民法の勉強ではありません。

その条文を一つ一つ、解釈していくことが民法の勉強です。
上記に書いたように、公の秩序って何?、善良の風俗って何?、法律行為って何?ということを考えて、答えを出していくことになります。

もちろん、小説を読んで、自分の好きなように解釈するのとはわけが違います。
小説なら、人によって、いろいろな解釈、感想を持ってもよいですが、民法の解釈は、人によってまちまちというのでは、困ります。
多少の、解釈の幅は許されるものの、一定の決まりがなければ、社会のルールとしての民法の意味がなくなってしまいますよね。

民法に限りませんが、法の解釈では、一貫性というものが要求されます。
その一貫性も個人の一貫性ではなく、民法が制定されてからの長い歴史の中での一貫性が要求されるということです。
同じ条文の解釈が現在と、過去とではまったく違う、人によってまったく違うというのでは、社会規範としての民法の意味がなくなってしまうわけです。
この一貫性のことを「すでに蓄積されている確立した法原理との整合性」とも表現されます。

一度、解釈された条文は、後々の類似の紛争でも、同じように適用されていくということになるわけです。
ですから、今現在起こっている紛争だけを考えて解釈するのではなくて、後に、類似の紛争が起こったときに、その解釈で妥当かどうかを考える必要があります。
つまり、「その射程に含まれる類似の事例でも妥当性を主張しうるものでなければならない」わけです。

そして、民法は、一般社会の法律ですから、われわれ一般人の常識に即した解釈でなければなりません。
われわれ一般人の感覚からかけ離れているようでは、法解釈としての価値はないわけです。
そのため、「常識に合致した結論でなければならない」わけです。

要するに、民法の解釈では、法的な素養、一般的な常識を持って解釈しなければならないということですね。

この記事の続きは、民法の解釈とは?でご覧ください。

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