民法総則 代理権の濫用
代理権の範囲内の行為ありながら、代理人が代理人自身、または、第三者の私腹を肥やすために代理権を濫用し、本人や相手方に損害を与えるということがある。
もしも、代理権の範囲を超えた行為あるならば、無権代理として対処することができるが、形式的に代理権の範囲にとどまる行為でありながら、代理権限を濫用している場合は、民法上規定がないため、どう対処するべきかが問題になる。
例えば、以下のような場合である。
甲
↓
乙→←丙
乙は、甲から、丙から原材料を購入する代理権限を与えられていた。乙は、この権限を濫用して、丙から買い受けた原材料を第三者に転売して、その利益を着服していた。
この事例では、乙は、付与された代理権通りの行為を行っており、形式的には代理権の範囲内の行為である。従って、事が露見しない限り、乙の行った行為は、丙及び甲に対して帰属していく。
また、事が露見したとしても、甲は、代理人である乙が代理権を濫用したからといって、乙の行った行為を無効だと主張することは妥当ではない。
丙としては、権限どおりの行為を乙が行っており、乙に引き渡した原材料は甲の元に届いていると思っているわけであるから、乙の行為が無効だとするのでは、取引の安全を害することになる。
しかし、もしも、丙が乙が原材料を転売して利益を着服していることを知っていた場合には、丙を保護する必要はない。
判例、通説によると、このような事例では、民法93条の心裡留保を類推適用して、原則として、乙の行為の結果は甲に帰属することになるが、例外的に、丙が代理権の濫用の事実を知っていた場合には、甲に帰属しないとしている。
なぜ、個人に適用する心裡留保の規定が代理権の濫用で類推適用できるのか疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
代理の関係の場合は、甲と乙は、一体の人間として捉えることができます。
甲が乙に代理権を与えることで、甲が乙に乗り移っていると考えることができるわけです。
乙としても、甲だったら、同考えて行動するだろうかということを考えながら、代理権を行使することになりますから、あたかも、甲が乙に乗り移って、一体の人間となって行為していると考えることができるわけです。
そのため、乙と丙の取引は、甲と丙の間で取引しているのと同じ意味を持つことになるというのが代理の関係です。
ですから、乙の買いますという意思表示は、甲が意思表示しているのと同じことになります。そのため、乙の行った行為は原則として、甲に帰属することになります。
しかし、乙の真意は、転売を意図しているわけですが、丙がその真意について、善意であれば、依然として、その行為の結果は甲に帰属しますが、丙が悪意であれば、その行為の結果は、無効になるということです。
参考条文
民法
(心裡留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
(無権代理)
第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
以上、今日は、代理権の濫用についてでした。
この記事は、ゼロニュース 民法総則 代理権の濫用より提供されています。
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